トップオピニオン社説主張 年頭にあたって 「狂気」から「常識」 回帰の年に 本紙主幹・早川俊行

主張 年頭にあたって 「狂気」から「常識」 回帰の年に 本紙主幹・早川俊行

 令和8年が明けた。今年の干支(えと)「丙午(ひのえうま)」は、火のエネルギーが強く、勢い、決断、刷新を象徴するとされる。

 くしくも昨年、米国ではトランプ大統領、わが国では高市早苗首相が誕生した。共に干支のイメージがぴったり当てはまる指導者であり、国内外の潮流が大きく変わっていく可能性を予感させる。

蔓延する価値相対主義

 英国人ジャーナリストのダグラス・マレー氏は、人種やLGBTを巡る議論が合理性ではなくイデオロギーに支配される現代社会を「大衆の狂気」と呼んで告発した。左翼イデオロギーが日本を含む世界各国で価値観の混乱をもたらし、家庭や国家の在り方を大きく揺さぶっていることは否定できない事実である。

 マレー氏の言う「狂気」が劇的に加速する転機となったのは2015年ではないかと思う。この年、米国では連邦最高裁判決によって同性婚が全米で合法化され、日本でも東京都渋谷区で同性カップルを「結婚に相当する関係」と認める「パートナーシップ制度」がスタートした。

 男女間のものと信じられてきた結婚の定義が崩れたことで、タガが外れるかのように価値相対主義が蔓延(まんえん)し、それまで当たり前と思われてきた常識が次々に揺らいでいった。

 生物学的には男性であるトランスジェンダーに女性スペースの利用や女子スポーツへの参加を認める動きが広がり、これに不快感を抱くことは逆に差別だと非難される風潮が生まれた。特に欧米では、性別違和を訴える若者が急増し、性転換治療・手術を受けたことを後悔するという悲劇が相次いで報告されている。

 「狂気の時代」の極め付きがパリ五輪だろう。開会式でドラッグクイーン(女装パフォーマー)らを登場させ、レオナルド・ダビンチの名画「最後の晩餐(ばんさん)」を揶揄(やゆ)する演出はあまりに異常だった。

 こうした価値観の混乱の背後にあるのは何か。暴力ではなく文化や伝統を破壊することで共産主義革命を実現する、いわゆる「文化マルクス主義」である。

 文化マルクス主義の潮流を生んだのは、イタリアのアントニオ・グラムシやドイツの「フランクフルト学派」の思想家たちだ。彼らの思想は「マルクス主義の亜種」として異端視されたが、これを受け入れたのが米国の大学だった。ハーバードやコロンビアなどの名門大学で培養された文化マルクス主義は、世界各地に輸出され、既存の価値観を蝕(むしば)んでいった。

 移民の大量流入によって社会の調和や秩序が崩れる現象は、欧米だけでなく日本でも深刻な問題になっている。米ハドソン研究所のジョン・フォンテ上級研究員によると、国家や国境を時代遅れのものと見なすグローバリズムも、根底には文化マルクス主義があるという。現代社会が直面する諸問題のほとんどは、反家庭・反国家・反宗教の文化マルクス主義にルーツがあることをはっきり認識する必要がある。

 約10年間に及ぶ「狂気の時代」を経て、草の根有権者による「バックラッシュ(反動)」が起き始めている。米国でトランプ氏が選ばれたことが最たる例だが、イタリアやアルゼンチンなどでも明確な保守哲学を持つ国家指導者が現れている。

 トランプ氏が掲げる「常識革命」は、失われつつある常識を取り戻すという意味だ。常識を破壊してきたのは文化マルクス主義であり、常識革命の本質は文化マルクス主義との戦いであると言っていい。

 これはわが国にとっても左翼イデオロギーを排除する絶好のチャンスである。幸い、高市首相はトランプ氏と波長が合っている。根底にあるのは「愛国の絆」であり、思想戦でも共闘できると期待される。

 トランプ氏は米国が今年、建国250年の節目を迎えるに当たり、「アメリカ・プレイズ(米国は祈る)」というイニシアチブを立ち上げた。米国民に10人以上のグループを作って週に1時間、国家のために祈ることを呼び掛けるものだ。

 米国には英国と戦った独立戦争(1775~83年)の最中、政治指導者たちが「断食と祈りの日」を何度も設け、神の導きを得て難局を乗り越えようとした歴史がある。トランプ氏は建国の理念、特に宗教的伝統に立ち返ることで、常識革命を実現しようとしている。

 宗教に基づく価値観を

 わが国は戦後、米国の占領政策の影響もあって世俗主義が広がり、宗教を忌避する風潮が今なお強まる一方だ。文化マルクス主義に壊された常識を取り戻す土台となるのは健全な精神性に他ならない。刷新を象徴する丙午の今年、宗教に基づく価値観や道徳を取り戻し、「狂気」から「常識」へ回帰する転機としたい。

 

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