米国防総省は中国の軍事・安全保障分野の動向に関する年次報告書を公表し、「中国は2027年末までに台湾を巡る戦争に勝利できると見込んでいる」として27年までの台湾有事に改めて警戒感を示した。
「台湾有事は日本有事」だ。日本は同盟国である米国のトランプ政権との関係を強化した上で台湾問題への関与を深めていくとともに、抑止力向上に向けた防衛力整備を急ぐべきだ。
台湾有事「27年までに」
27年は中国人民解放軍の創設100年であるとともに、習近平共産党総書記(国家主席)の3期目最後の年に当たる。習氏は建国の父、毛沢東と並ぶ終身指導者を目指しているとされ、共産党政権の悲願である台湾統一に向けた成果を挙げれば、4期目への強力な後押しとなる。
報告書は、中国が27年までに台湾有事で「戦略的に決定的な勝利」を達成する能力を確立するために「着実な進展を続けている」と強調。米国などの介入を想定し、軍民の力を統合して「国家総動員で対応しようとしている」と主張した。
中国の空母「遼寧」と「山東」は今年6月、米空母打撃群の迎撃を想定した演習を実施。遼寧は小笠原諸島とグアムを結ぶ「第2列島線」を越えた南鳥島付近を起点に西に航行し、山東は沖ノ鳥島北方を通過して東に向かった。この動きは、遼寧が演習で米空母役になったことによるものだと分析されている。11月には3隻目の空母「福建」が就役し、空母を交代で展開する本格的な運用体制が整うなど中国の脅威は増大する一方だ。
中国では軍幹部が失脚し、台湾侵攻作戦に影響が出るとの見方も出ていた。しかし今回の報告書を見れば、決して油断はできないことが分かる。
習氏が台湾侵攻に初めて言及したのは19年1月だ。台湾政策を武力解放から平和統一に転換した「台湾同胞に告げる書」の発表40周年を記念した演説で「武力使用を放棄することは承諾できない」と明言した。それから間もなく7年になるが、中国ではこの間、経済が停滞しても軍備拡大を続けてきた。
米政府は今月、台湾に高機動ロケット砲システムHIMARS(ハイマース)や対艦ミサイル「ハープーン」、対戦車ミサイル「ジャベリン」などを売却することを決定した。日本では、高市政権が25年度補正予算で国内総生産(GDP)比2%への防衛費増額を2年前倒しで達成し、安全保障関連3文書の改定も26年に早める方針を示している。台湾を含む地域の平和と安定のため、日米安保体制の抑止力強化につなげるべきだ。
情報戦への備えも不可欠
中国は、高市早苗首相が国会で台湾有事について「存立危機事態」に該当し得ると答弁したことに強く反発し、日本への渡航自粛の呼び掛けや日本産水産物の輸入制限などを行っているほか、中国軍の戦闘機が航空自衛隊の戦闘機にレーダーを照射するなどの挑発に出ている。こうした圧力に加え、報告書が指摘するように、中国は各国で世論操作などの工作に乗り出しており、日本でも世論の分断などを図る恐れがある。中国の情報戦への備えも欠かせない。






