トップオピニオン社説首都直下地震 一人一人が防災意識向上を【社説】

首都直下地震 一人一人が防災意識向上を【社説】

災害時の帰宅困難者向けに備蓄品を配る訓練の様子(森ビル提供)

 政府が公表した首都直下地震の新たな被害想定によると、東京都心南部を震源とするマグニチュード(M)7クラスの地震が発生した場合、最悪のケースでは東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県を中心に約1万8000人が死亡する。

 被害の減少に向けた取り組みを加速させる必要がある。

 前回想定を半減できず

 死者数は2013年に公表された前回想定の約2万3000人から2割強減り、経済的な被害・影響額も前回の約95兆円から約83兆円に減少した。とはいえ、依然として被害が甚大であることに変わりはない。

 政府は前回想定を踏まえ、死者数などを「おおむね半減させる」ことを目指してきたが、達成できなかった。建物の全壊・焼失棟数は最大約40万棟で、これも前回想定(約61万棟)を半減させられなかった。

 被害が最悪となるのは、冬の午後6時ごろに毎秒8メートルの風が吹くケースだ。このケースでは、死者と建物被害の7割が火災によるものと想定されている。被害を減らすには火災への対策が欠かせない。

 それにもかかわらず、揺れを検知して電気を遮断する「感震ブレーカー」の首都圏での設置率は約2割にすぎない。政府が啓発に努めることはもちろんだが、国民一人一人が防災意識を向上させ、備えを強化しなければならない。家具の固定率が全国で36%(22年度)にとどまっていることも懸念材料だ。

 前回想定を上回ったのは帰宅困難者数だ。今回は前回より約40万人増えて約840万人に上るとの試算が示された。4都県に茨城を加えた5都県で、公共交通機関の運行停止や道路の交通規制などで当日中に帰れない人を算定した。

 数字を押し上げた要因としては、高齢者や乳児連れの人、遠距離通学の小学生らは、自力での徒歩帰宅が難しいということで帰宅困難者と見なしたことが挙げられる。食料や水、毛布、簡易トイレなど備蓄の一層の充実が必要だ。

 また東京一極集中で人口が増え続けているため、帰宅困難者は減少に転じにくいという事情もある。その意味では、一極集中の是正が減災につながると言えよう。

 自民党と日本維新の会は来年1月召集の通常国会で、災害時に首都機能を代替する「副首都」法案を成立させることを目指している。ただ、維新の本拠地・大阪を副首都とする案には自民内から反発が出ている。副首都の設置や首都機能移転に関しては、減災だけでなく、地方創生に資するものであることが求められよう。

 災害時のデマに警戒を

 今回の被害想定では、災害時のデマ対策への言及が大幅に増えた。今月、震度6強を観測した青森県東方沖を震源とする地震でも、生成AI(人工知能)で作成したとみられるニュース動画などが「震源は東京湾北部」「宮城県に過去最大級の津波」などとうそを伝えた。

 災害時のデマは被害を増やす恐れがあり、警察庁はこうした違法情報に対する捜査態勢を強化している。警戒を高めなければならない。

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