トップオピニオン社説独裁崩壊1年 シリア安定へ国内統合急げ【社説】

独裁崩壊1年 シリア安定へ国内統合急げ【社説】

19日、シリアでの過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦を支援するため、出撃態勢に入る米軍ヘリコプター=米軍提供、撮影場所不明(AFP時事)

 昨年12月にシリアのアサド政権が崩壊して1年。国内は依然、混乱しているが、ようやく手に入れた自由の恩恵を国民が享受できる安定した体制の確立が急務だ。

 反政府勢力との衝突続く

 シリアではハフェズ、バッシャール両氏の親子2代、半世紀以上にわたって、アサド政権による独裁体制が続いてきた。

 国内にさまざまな勢力を抱えるシリアにとって、独裁が「安定」への一つの手段であったことは確かだろう。アサド家はイスラム教シーア派の一派で少数派のアラウィ。父親のハフェズ氏は、イスラム組織「ムスリム同胞団」など国内の反体制勢力に対し、武力を使った激しい弾圧を行ったことで知られる。

 父の死去後、大統領の地位に就いたバッシャール氏は、英ロンドンへの留学経験もあり、30代と若かったこともあり、民主化への期待は高まった。だが、独裁体制は続き、昨年、体制が崩壊するまで20年余り権力の座にとどまっていた。

 その体制を崩したのが、同胞団系の国際テロ組織アルカイダの流れをくむ組織だったことは、因果応報と言うべきか。

 体制打倒を率いたシャラア氏は、国内で反体制活動を続けてきたイスラム過激派組織「ヌスラ戦線」を前身とする「シャーム解放機構」(HTS)の指導者だった。シャラア氏自身、米国にテロリストに指定されていた。

 そのイスラム組織が、わずか1カ月ほどで長期独裁政権を崩壊へと追いやったことに世界は騒然とした。シャラア氏は暫定大統領に就任し、国民の統合、民主的な統治を主張したものの、国際社会が信用しなかったのは当然だろう。とりわけ、隣国イスラエルの不信感は根強い。イスラエルとしても隣国の安定は望むところであり、水面下での接触が進められている。

 シャラア暫定政権としては、国内の統合と共に国際社会からの信頼獲得が急務だ。シリア北東部を支配するクルド人主体の「シリア民主軍」(SDF)は今年3月、国家への合流に同意。ところが年末までの予定だった暫定政権側との停戦は実現せず、統合は進んでいない。北東部の反政府勢力とも衝突が続く。南部では、イスラム教の少数派ドルーズ派とベドウィン(遊牧民)との衝突も起き、多数の死傷者が出た。旧政権に優遇されてきたアラウィ派への国民の反発も強く、襲撃事件が起きている。これらの勢力をまとめ上げる強いリーダーシップが必要だ。

 一方、国際社会との関係構築は順調に進んでいる。シャラア氏は11月に米国を訪問してトランプ大統領と会談。経済協力などの関係強化、復興、再建への支援の約束を取り付けた。アサド政権下で科せられていた制裁も緩和されつつあり、米政府の対シリア制裁「シーザー・シリア市民保護法」の停止の延長措置も取られた。日本政府も「国際社会とも連携しながら、シリア政府と国民による包摂的、平和的かつ安定した移行を支えていく」ことを明確にしている。

 地域の安定にも貢献

 トルコ、イスラエル、イラクといった地域の主要国に囲まれるシリアの国内統合、安定化は地域の安定にも貢献する。

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