トップオピニオン社説12月の日銀短観 先行き悪化に対策欠かせぬ【社説】

12月の日銀短観 先行き悪化に対策欠かせぬ【社説】

 日銀が発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、トランプ米政権の高関税政策の悪影響が限定的で景気の緩やかな回復基調が維持されたことを示し、日銀が今月に予定している追加利上げを後押しする内容となった。

 ただ、先行きは大企業製造業こそ横ばいだが、それ以外は軒並み悪化し、予断を許さない。まずは経済対策で内需を強め、来年以降の利上げには一段の慎重さが必要だ。

 個人消費に勢いなし

 企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業製造業で小幅ながら3四半期連続で改善。中小企業製造業もプラス6と前回(プラス1)から5ポイント改善し、コロナ禍前の2019年3月以来の水準になった。

 米関税政策を巡る懸念の後退に加え、価格転嫁の進展が寄与。世界的な人工知能(AI)ブームによる需要増もあり、国内経済が緩やかな回復基調を維持していることを示した。非製造業では大企業でプラス34と横ばいだが、中小企業はプラス15と4四半期ぶりの改善となった。

 企業収益の見通しや設備投資計画が引き続き高水準にあることが短観で示され、また、日銀が今回初めて公表した26年度の企業の賃上げスタンスに関する調査でも、全33カ所のうち2カ所が25年度を上回り、29カ所が横ばいと回答するなど賃上げ姿勢の維持が確認された。

 日銀は利上げの判断に当たり、賃上げに向けた「初動のモメンタム(勢い)」(植田和男総裁)を重視してきただけに、今回の短観は18、19両日の金融政策決定会合で実施方針を固めた政策金利の引き上げを後押しする内容と言える。

 利上げは、長期金利が上昇し、為替相場が1㌦=155円台、1ユーロ=182円台となっている状況からも、これ以上の円安を阻止するという意味で望ましいだろう。

 問題は利上げ後だ。今回の短観でも、先行きについては大企業製造業は横ばいだったが、それ以外は大企業非製造業6ポイント、中小企業製造業4ポイント、中小企業非製造業5ポイントと軒並み景況感を悪化させているからだ。

 日中関係の悪化を背景としたインバウンド(訪日客)需要の減少を懸念する声もあるが、一番の問題は個人消費に依然として勢いが出てこないことだ。消費者物価はこのところ伸び率が拡大し、10月は前年同月比3・0%上昇と3%台に達した。実質賃金は10カ月連続マイナス、コメの値段は高止まりを続けるなど、長引く物価高に家計は節約志向から抜け出せずにいる。

 来年以降の利上げ慎重に

 商工中金による中小企業2000社を対象にした調査では、来年、定例給与・時給引き上げを計画している企業数の割合は72・4%と今年の計画(69・8%)を上回ったが、引き上げ率は縮小した。先行き懸念が現実化すれば、資金余裕に乏しく、人手不足から防衛的な賃上げを迫られている中小企業に厳しい影響が出かねない。

 11・7兆円の物価高対策を含む総合経済対策の裏付けとなる25年度補正予算が成立した。日銀には来年以降の利上げについて、慎重な判断を期待したい。

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