
中国の焦りとも脅しとも取れる異常な行動が目立つ。日本近海で中国空母「遼寧」から発艦した戦闘機J15が、対領空侵犯措置に当たった航空自衛隊のF15戦闘機に対し2度にわたり断続的にレーダー照射した。偶発的な軍事衝突など不測の事態を誘発しかねない危険極まりない行為だ。
中国側の猛省と再発防止を強く求める。
防衛省が異例の即日発表
レーダー照射は「ロックオン」であり、いわば銃口を相手の正面に向けてまさに引き金に指をかけた状態に相当する。パイロット経験のある空自元幹部のいずれもが「あり得ない」行動と強調する。
今回、2度にわたり別々の自衛隊機にレーダー照射をしており、明らかに射撃の準備段階として目標を捉える「火器管制」と言える。
これまでも例えば2018年に能登半島沖の日本海で韓国海軍の艦艇が海上自衛隊機のP1哨戒機に対し、また中国海軍も13年にはフリゲート艦が海自護衛艦にレーダー照射している。しかし、今回のように戦闘機が戦闘機に対して行ったのは初めてで、防衛省は異例の即日発表となった。
こうした中国側の行為は現場の一パイロットが判断できるものではない。上からの指示と見るのが妥当だ。防衛省は「どのレベルからの指示か分析を進めている」としており、中国側の交信記録などから状況の冷静な把握に努めていることがうかがえる。
日本側は高市早苗首相はじめ小泉進次郎防衛相、さらには外交・防衛ルートを通じて中国側に強く抗議し再発防止を求めた。当然の措置である。
一方、中国側は「訓練海空域で(空自機が)妨害を行い、飛行の安全に重大な危害を及ぼした」などと主張している。レーダー照射には一切触れず反省の色もない。
この問題については、高市首相の「台湾有事」発言に端を発する中国側の対日強硬姿勢の一環と見る向きが強い。しかし忘れてならないのは、高市発言の有無にかかわらず、こうした事案は中国が進めている外洋進出戦略上、引き起こされる可能性があるということだ。
中国海軍は従来の沿岸型海軍から脱皮し、第1列島線(沖縄からフィリピン)から第2列島線(小笠原諸島からグアム)にまでプレゼンス拡大を企図。米国に対して「接近阻止・領域拒否」戦略を取っている。
そのために本格空母「福建」など空母機動部隊を動員し、日本近海にまで進出してその能力を高めようとしている。当然、空母発艦機の日本領空侵犯の可能性も高くなった。そのさなかでの事件だ。
南西防衛シフトの充実を
空自のスクランブルも頻度が増え、乗員の負担も増してこよう。その面での対応や南西防衛シフトのさらなる拡充が求められる。
高市首相の「台湾有事」発言を理由とする中国側の挑発に乗らず、冷静に中国側の戦略意図を見極めるべきだ。何より政治の覚悟と国民の支持による毅然(きぜん)とした姿勢が不可欠と言える。






