
高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁を受け、中国が日本非難の「宣伝戦」を活発化させている。日本は中国の不当な主張に逐次反論し、宣伝戦に対抗する必要がある。
「旧敵国条項」にも言及
中国の傅聡国連大使は今月、台湾有事が「存立危機事態」に該当し得るとした首相の国会答弁について、グテレス国連事務総長に書簡を送ったことを明らかにした。11月に続く2度目の書簡で、最初と同様に首相の発言撤回を訴え、最初の書簡への日本の反論に対しては「論点をずらし、中国に責任を転嫁している」と反発した。
看過できないのは、在日中国大使館が国連憲章の「旧敵国条項」にX(旧ツイッター)で言及したことだ。「日本などのファシズム・軍国主義国家」に対し「中国など国連創設国は安全保障理事会の許可を要することなく直接軍事行動を取る権利を有する」などと主張したが、この条項は1995年の総会決議で「死文化している」と決定されており、悪用することは許されない。日本外務省がXで「死文化した規定がいまだ有効であるかのような発信」と厳しく批判したのは当然だ。
首相の発言は政府の従来の見解に沿ったもので特に問題はない。中国は日本への観光や留学を自粛するよう国民に警告し、日本産水産物の輸入も再停止したが、こうした対日圧力こそ理不尽だ。
傅氏は「日本に安保理常任理事国入りを求める資格はない」とも表明した。だが、中国の習近平国家主席は台湾統一に向けて武力行使も辞さない構えを示している。東・南シナ海では覇権主義的な動きを強め、南シナ海では領有権を争うフィリピンの船に中国船が放水銃を使用したり体当たりをしたりするなどの危険な妨害を加えている。
このような中国に常任理事国の資格はあるのか。本来であれば、ウクライナへの侵略を続けるロシアと共に安保理から追放すべきだ。そのためのルールを早急に設けなければ、国連は「国際の平和と安全を維持する」役割を果たせず、機能不全に陥るばかりだろう。日本は引き続き、ドイツやインド、ブラジルなどと共に安保理改革を目指す必要がある。
今年は戦後80年の節目で、中国国内では反日感情を煽(あお)るような映画が公開された。9月には北京で「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年」を記念する軍事パレードが行われ、習氏はロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との結束を誇示した。
対日強硬姿勢は、中国で経済停滞が続く中、国民の不満をそらす狙いもあろう。しかし、単なる「ガス抜き」と見るのは危うい。中国は今後も自国に有利な国際世論の形成を図ろうと、さまざまな宣伝をしてくることが考えられる。
首相は乗じられるな
日本でも中国の反発を恐れ、首相に発言撤回を求める声も上がっている。だが撤回すれば、中国に「くみしやすい」と見られ、日本を取り巻く安全保障環境はかえって厳しさを増すだろう。首相は中国に乗じられないようにすべきだ。






