
香港の高層住宅で大規模火災が発生し、150人以上が死亡する大惨事となった。日本でもこうした火災が発生しないとは言い切れない。特に高層住宅では、スプリンクラーなどの消火設備の点検や避難経路の確認などを徹底する必要がある。
当局は反体制行動を警戒
香港メディアによると、高層住宅は1983年に供用が開始され、現在は約2000戸に4000人以上が居住。昨年7月から外壁の補修工事が行われていた。出火原因は分かっていないが、竹製の足場や防火基準を満たさない防護ネット、可燃性の高い発泡スチロールなどが工事で使用されていたことが被害拡大につながった。
竹製の足場は建物が密接した現場で組み立てや解体がしやすく、金属製に比べ価格が安いこともあって香港では広く利用されてきた。また、難燃性ネットの価格は通常のネットの約2倍に上るため、漁網が代用されることもあるという。コスト削減のために安全を軽視したことが、大惨事を招いたと言えよう。
防火対策をしっかりと講じていれば、出火してもぼやで済んだのではないか。現場の作業員が足場で喫煙していたとの苦情が多くの住民から寄せられていたとの報道もある。
さらに、火災の際に火災報知器が作動しなかったことも分かっている。これに関して、補修工事中に火災報知器は止めないと消防署に虚偽の申告をした疑いで、消防設備会社の男6人が逮捕された。逮捕された工事関係者は20人以上に達している。原因究明と再発防止を徹底しなければならない。
一方、今回の火災に関連し、中国政府直轄の治安機関、国家安全維持公署は、火災に便乗して混乱をもたらす行為は「厳しく処罰される」と警告した。防火対策の不備を巡って監督当局の責任を問う声が高まる中、当局批判が反政府デモにつながることを警戒し、反体制的な行動を封じ込める狙いだろう。
香港警察は、火災に関する請願書を作成したとして扇動容疑で男性1人を逮捕した。男性は独立調査委員会の設置や政府職員の責任追及など4項目の要求を掲げ、オンラインで署名を呼び掛けたり、現場周辺でビラを配布したりしていた。火災への便乗を理由に市民の人権を抑圧する中国政府や香港当局の姿勢は異常だと言わざるを得ない。
中国は2020年6月、香港への統制を強化する国家安全維持法(国安法)を施行し、返還後50年間は維持すると国際公約した香港の「一国二制度」を骨抜きにした。国家安全維持公署は今回、国安法や24年3月施行の国安条例を適用するとしている。香港政府は火災に関して独立調査委を設置するが、市民の批判を恐れて形だけの調査で終わらせてはなるまい。
安全意識の一層の向上を
日本でも安全軽視で大規模火災が生じた事例がある。1982年2月に死者33人を出したホテルニュージャパン火災では、スプリンクラーなどの未設置が被害を拡大した。背景には、会社側の利益優先主義があった。
惨事を防ぐには、社会全体で安全意識の一層の向上に努めなければならない。






