
トランプ米政権はウクライナと協議し、先にロシアとまとめたウクライナ侵攻終結への28項目の和平案を19項目に修正した。先の米露の特使が水面下で交渉した提案はロシア側の主張が強く反映されていたが、和平の名の下にロシアによる主権侵害を正当化しかねない懸念を排除し、現実的な合意点を模索していくべきだ。
領土割譲求めた28項目案
米露による28項目の和平案はウクライナや欧州諸国に突然示されたが、事実上、ロシアの「力による現状変更」を追認するものだ。ロシアを和平交渉のテーブルに着けようとするためロシアの主張を大きく取り入れたのだろうが、ウクライナは敗戦国のように扱われ、領土の割譲や戦時行為の免責などロシア軍の戦争犯罪を不問にする内容に批判が出たのは当然だ。
日本と欧州、カナダの首脳は懸念を表明し、さらなる協議を求める声明を発表。米国とウクライナの間で修正協議が行われ、ロシアの軍事侵攻を正当化する懸念の払拭が図られた。ロシアの行為は、国連憲章で定められた侵略戦争禁止の原則や領土不拡張の原則といった国際法の根幹を踏みにじる問題だけに慎重な対応を求めたい。
28項目案では、ウクライナはクリミア半島、ルハンスク州、ドネツク州をロシアに割譲し、ウクライナ軍の抗戦が続いているドネツク州の一部も非軍事化された緩衝地帯にするなど、ウクライナ側に非常に厳しいものだった。これに対して19項目修正案では、割譲はウクライナと米国両首脳の政治判断に委ね、先送りにされる方向だ。
また、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)への加盟についても、ウクライナと米国の首脳間で協議するという。ロシアによる侵攻の一つの理由がウクライナのNATO加盟阻止だった。
28項目案ではNATO拡大の停止、ウクライナ憲法にNATO非加盟を明記し、軍を60万人規模に制限するなどの内容があった。和平によってウクライナの主権を制限することは本末転倒であり、修正案でこれらが撤回されたのは評価できる。
ただ、米国は同盟関係にないウクライナに巨額の武器供与をしてきた最大の支援国であり、予算措置に限度もあろう。トランプ大統領は当初、27日までの28項目和平案受け入れをウクライナに迫るなど「限界」を公言している。ウクライナは軍事的に劣勢にあり、戦闘が長引けばロシアの占領地域がさらに広がる可能性がある。
この現実の前に、米国が主導する和平案によってロシアのこれ以上の西進を防ぎ、ウクライナを主権国家として存続させ、ロシアに周辺国への不可侵を誓わせ、制裁を解除して米欧との関係を正常化させて国際秩序に組み込む戦略的判断を模索することは一理ある。
しかし、米露の妥協で和平を進めるのではなく、ウクライナと欧州などの関与が不可欠だ。
侵略抑止と秩序維持を
重要なのはウクライナの安全保障を保証することだ。修正和平案を軸に、侵略の抑止と国際秩序の回復を実現させるように再構築されなければならない。





