
中国の習近平政権がロシアをパートナーとして北極圏への進出を加速させている。国際社会は、ルールを軽視する中露両国を念頭に、北極圏で「法の支配」に基づく自由で開かれた国際秩序を構築すべきだ。
連携を強化する中露
北極圏は地球温暖化で海氷が減少し、新航路開拓や資源開発を巡る各国の競争が激しさを増している。習政権は2017年以降、巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として、ロシアと共に「氷上シルクロード」建設に取り組んできた。ロシアによるウクライナ侵攻後、西側諸国がロシアと距離を置いたことで、中露連携は強化されている。
中東情勢に左右されず、友好国であるロシア沖を通る北極海航路は、中国にとって安全保障面でも価値がある。今年9月に中国を出航したコンテナ船は、20日間で英国に到着。スエズ運河を抜けて地中海を通る南回り航路では約40日かかっていた輸送期間が、半分に短縮された。
中露は先月の政府間会合で北極海航路の商業利用を加速させていく方針を確認した。中国は26年にも夏季の定期航路として活用したい考えだ。中露は今後、シーレーン(海上交通路)の保護などを名目とした軍事・安全保障連携を拡大していくとみられる。
北極圏には、領土権主張の凍結や平和利用などを定めた南極条約のような条約がない。権威主義勢力の中露が北極圏で主導権を握った場合、排他的な航路の規制導入や資源の独占的利用などが懸念される。
米国防総省は昨年7月発表の北極圏に関する戦略文書の中で、中露の連携強化が「北極圏の安定と脅威の構図を変える可能性がある」と警戒感を示した。トランプ米大統領がデンマーク領グリーンランドの領有に意欲を見せているのも、北極海航路で米国のプレゼンスを強化することを狙ったものだろう。米露の中間に位置するグリーンランドは戦略的要衝だ。
昨年1月に上川陽子外相(当時)はフィンランドで、北欧との協力強化を盛り込んだ外交方針「北欧外交イニシアチブ」を公表。「北極と海洋」を柱に掲げ、海洋秩序の維持・強化を図る考えを示した。日本は中露による「支配」を許さないよう、欧米と連携を深めて北極圏に積極的に関与する必要がある。
日本はトランプ政権と造船分野での協力で合意した。米国は、造船産業の衰退が安全保障面などに悪影響を及ぼす事態を懸念。同盟国である日本や韓国と協力し、再構築を急ぐ方針だ。特に北極圏の航行に必要な砕氷船に関する日本の技術力は高く、こうした協力を北極政策の強化につなげるべきだ。
戦略的な協力進めよ
米国への対抗上、「蜜月」を演出する中露も一枚岩ではない。習政権は原油や天然ガスの購入を通じ、ウクライナ侵攻を続けるロシアを経済的に支えてきた。このためロシアのプーチン政権は、自国の勢力圏である北極海や中央アジアなどに進出する中国に譲歩せざるを得ない立場に置かれている。西側諸国はこうした中露関係も念頭に、北極圏での協力を戦略的に進める必要がある。






