トップオピニオン社説HTV―X 宇宙輸送の新たな挑戦開始【社説】

HTV―X 宇宙輸送の新たな挑戦開始【社説】

新型宇宙ステーション補給機(HTV―X)を搭載し打ち上げられるH3ロケット7号機=26日午前、鹿児島県・種子島宇宙センター

 国際宇宙ステーション(ISS)に物資や実験装置などを輸送する新型の補給機(HTV―X)1号機がH3ロケット7号機で打ち上げられた。

 HTV―Xは無人補給機「こうのとり」(HTV)の後継機だが、輸送能力を増強しただけでなく、月探査への貢献も視野にさまざまな改良が施され、ISSから離脱後、各種の実証実験を行う。宇宙輸送の新たな挑戦にエールを送りたい。

 輸送能力・運用性が向上

 HTV―Xは単なる補給機にとどまらず、将来のさまざまなミッションへの対応を見据える。一つはISSに物資を輸送後、軌道上での技術実証プラットフォームとして活用する。

 またHTV―Xで獲得するシステムは、ISS退役後の地球低軌道での有人活動や国際宇宙探査ミッションへの応用が可能で、特に米国が主導する国際月探査「アルテミス」計画で予定されている月周回有人拠点「ゲートウエー」への物資補給での貢献が検討され、米国の期待も高い。

 HTV―Xがこうのとりと大きく異なる点は、ISSからの離脱後の運用だ。こうのとりは離脱後、ISSで不要になった廃棄物を積み、数日で大気圏に再突入させていたが、HTV―Xは最長1年半にわたり、地球周回軌道を飛行しながらさまざまな実証実験を実施する。

 今回の1号機では、ISSからの離脱後、約3カ月にわたり、超小型衛星の放出のほか、宇宙ごみ除去への応用が期待される世界初のレーザー測距による定量的な精度評価と、宇宙太陽光発電システムのような数百㍍から数㌔級の大型宇宙構造物の構築を見据えた薄型軽量の展開パネルやアンテナの性能・動作などの実証実験を行う。

 運用面だけでなく、機体の軽量化を図り、輸送能力を約6㌧とこうのとりの約1・5倍に向上。打ち上げ後に2枚の太陽電池パネルを展開する形にすることで供給電力量も1・5倍に増やした。

 H3ロケットについても期待は大きい。今回の7号機は液体燃料エンジン(LE―9)2基、固体ロケットブースター(SRB―3)4基の「24形態」で、打ち上げ能力が日本の宇宙開発史上最大となり、見事に成功した。

 H3は液体エンジンやSRB―3の数、衛星カバー(フェアリング)の形状を衛星の大きさや投入軌道に応じて選択することで、価格面を含め幅広い需要のカバーを目指している。

 現在準備中の6号機では、SRB―3を使わず、3基のLE―9のみで打ち上げる「30形態」で計画。開発目標に掲げる「H2Aの半額」(約50億円)のコストはこの形態で実現する見通しだ。

 形態拡充で受注拡大を

 7号機で成功させた最大能力の24形態では、商業需要の多い静止衛星打ち上げで最大6・5㌧の大型衛星も搭載可能で、近年増えている小型衛星を大量投入する「コンステレーション」への対応も視野に入れる。

 打ち上げまでの準備期間の短縮などを含め、コスト低減と形態の拡充で世界の衛星打ち上げ市場で受注拡大を実現したい。

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