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鉄道政策 安保も念頭に置いた検討を【社説】

 JR東日本は、利用人数が一定以下のローカル線で2024年度の赤字額の合計が790億円に上ったと発表した。一部路線については沿線自治体との協議で既に廃線で合意している。

 ただ、鉄道の存在は安全保障上も重要だ。国も戦略的な観点から鉄道政策を検討することが欠かせない。

 地方路線は衰退の一途

 今回対象となった36路線71区間の全てが赤字で、合計は23年度(36路線72区間)に比べて33億円拡大。乗客の減少に加え、新型コロナ禍を受けた業績悪化で先送りしていた修繕費用を計上したことが要因という。

 JR東は、一部路線で今後の輸送の在り方を巡り沿線自治体と協議している。このうち、大雨災害により運休する青森県の津軽線蟹田―三厩の区間は27年4月の廃線で地元と合意。千葉県の久留里線、新潟と山形両県の米坂線、群馬県の吾妻線でも検討されている。

 1960年代以降のモータリゼーションによって、国鉄は慢性的な赤字体質に陥った。国鉄は87年に解体され、現在のJR各社に引き継がれたが、JR東に限らず、地方路線は衰退の一途をたどっている。

 ローカル線を巡って、国は「再構築協議会」制度を2023年10月に創設した。これは国と鉄道会社、自治体が、バス転換なども含む再編協議を進めるための枠組みだ。制度創設の背景には、都市部の収益で赤字路線を維持する従来のやり方では限界を迎えたことがある。

 協議では地域交通網の維持はもちろん、地方創生の観点も求められる。拙速に廃線を決めるのではなく、存廃は路線網全体で考え、観光客らが地域全体にもたらす経済効果も合わせて検討する必要がある。また、鉄道は人口が減った地域でも貨物などを運ぶ役割を担っている。トラックと比べて二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないという利点もある。

 一方、鉄道に関しては安全保障上の重要性も踏まえた政策を講じなければならない。ロシアのウクライナ侵攻はそのことを改めて認識させた。侵攻に際し、ロシアは装備品や部隊を鉄道で運んだとされる。ウクライナも支援国からの戦車やミサイルなどを鉄道で受け入れたという。1台40㌧~50㌧の重さになる戦車や弾薬を大量に輸送するのは鉄道が適しているためだ。中国がチベット自治区で鉄道整備を進めているのも、国境紛争を抱えるインドを念頭に置いたものだと言われる。

 日本でも戦時中、鉄道は全国各地に兵員や軍需物資を輸送する上で最も重要な役割を果たした。関門トンネルが戦時中に開通したのも、軍事利用のために急ピッチで建設したからだ。戦後の青函トンネルや瀬戸大橋も有事に備えて造られた。

 重要路線は国が支援を

 路線の収益性のみを重視し、公共性を考慮しなければ国益を損なうことにもなりかねない。欧州では、国や州政府が鉄道インフラの維持に責任を持つケースが多い。

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