トップオピニオン社説暗号資産窃取/北朝鮮の身勝手な国家犯罪 【社説】

暗号資産窃取/北朝鮮の身勝手な国家犯罪 【社説】

 国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議の履行状況を監視する「多国間制裁監視チーム(MSMT)」が、北朝鮮のサイバー活動に関する報告書を公表し、同国による暗号資産(仮想通貨)窃取額が大幅に増加していると指摘した。

 北朝鮮は窃取した暗号資産を核・ミサイル開発の資金源にしている。不法な手段で得た資金で周辺諸国を脅かすことは断じて容認できない。

 既に昨年を大きく上回る

 報告書によると、北朝鮮は2024年に約12億㌦(約1800億円)相当の暗号資産を盗んだ。今年は9月までで約16億㌦(約2400億円)以上の被害が出ていると推定され、既に24年を大きく上回っている。

 今年2月には、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイを拠点とする暗号資産交換業者から約15億㌦(約2250億円)相当を窃取している。単独の暗号資産窃取事件としては史上最大の被害額だという。昨年5月には日本の交換業者DMMビットコインから約482億円相当を窃取するなど、莫大(ばくだい)な額の暗号資産が北朝鮮に流れている。北朝鮮のハッカー集団は生成AI(人工知能)技術などを利用し、手口は巧妙化している。

 北朝鮮は大量破壊兵器の開発資金の4割を暗号資産窃取で賄っているとの指摘もある。今月に平壌で行われた軍事パレードには、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や極超音速ミサイルが登場。高市早苗首相の就任直後にも、軍事力誇示のために短距離弾道ミサイルを発射した。

 北朝鮮の核・ミサイル開発は安保理決議に違反する行為だ。それにもかかわらず、開発のために国を挙げて暗号資産を窃取し、政権維持を図ることは身勝手極まりない。

 報告書によれば、北朝鮮は中国、ロシアなどを拠点とする北朝鮮国籍者や仲介者を通じ、窃取した暗号資産を法定通貨に洗浄している。日米韓をはじめとする国際社会は、第三国での現金化阻止のため、金融機関への監視を一層強化すべきだ。

 このほか、北朝鮮はIT労働者を外国に派遣し、身分を偽って仕事を受注させて外貨を獲得している。報告書でも、中露に加え、ラオスやカンボジアなどにIT労働者を派遣していると分析している。

 日本人に成り済まし、収入を得た事例も確認されている。今年4月には、北朝鮮のIT労働者とみられる人物に口座情報などを提供し、IT業務に関するアカウントを作る手助けをしたとして、警視庁公安部が日本人の男2人を書類送検した。アカウントで受注された業務の報酬は、最終的に海外に送金されていた。政府は、民間企業などが北朝鮮IT労働者に業務を発注することのないよう、注意喚起を繰り返す必要がある。

 日米同盟、防衛力強化を

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は9月、中国で行われた「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年」を記念する軍事パレードに出席し、中露両国との結束を誇示するなど、その脅威は高まっている。日米同盟や防衛力の強化によって抑止力向上を実現できるか高市首相の手腕が問われる。

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