ロシア政府が北方領土の二つの無人島に名前を付けた。北方領土は日本固有の領土だ。ロシアによる命名は不法占拠を正当化するものであり、断じて容認できない。
正教宣教師の名を付ける
タス通信は、ロシア政府が小クリール諸島(北方領土の色丹島と歯舞群島)にある二つの無人島に「ニコライ・カサートキン」「インノケンティ・ベニアミノフ」と命名したと報じた。これはロシア正教会の宣教師の名前だ。ニコライは幕末から明治にかけて日本に正教を布教し、日本正教会の総本山である東京・神田駿河台の「ニコライ堂」創設者として知られる。
1855年の日露通好条約では、北方領土の択捉島とその北のウルップ島の間に国境が定められた。北方領土が日本固有の領土であるにもかかわらず、旧ソ連は第2次世界大戦末期の1945年8月9日、当時まだ有効だった日ソ中立条約に違反して対日参戦し、日本が降伏文書に調印した後の9月5日に北方四島の全てを占領した。無人島命名は不法占拠を既成事実化するものであり、到底受け入れることはできない。
日本は4島返還を求め続けてきたが、ロシアは誠意ある対応をしてこなかった。56年の日ソ共同宣言は平和条約締結後の歯舞群島と色丹島の引き渡しを明記している。しかしロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵攻で対露制裁を科している「非友好国」の日本を牽制(けんせい)するため、今回の措置に踏み切ったとみていい。
このところプーチン政権は、北方領土の支配を正当化する動きを強めている。今年8月には、千島列島北東端の占守島でロシア高官らが出席して「対日戦勝記念碑」の除幕式を挙行。プーチン氏は声明で、千島列島の「解放」が「第2次大戦で最後の決定的な戦い」だったと強調した。今月にはロシア当局が、色丹島周辺での射撃訓練実施を日本政府に通告し、北方四島の周辺海域で他国軍艦・公船の無害通航権を停止する航行警報を出した。
さらに9月には、プーチン氏が中国の「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年」を記念する軍事パレードに出席し、習近平国家主席や北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記らと結束を誇示した。覇権主義的な動きを強める中国や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮と共に日本に圧力をかける狙いがあろう。
だが北方領土占領はウクライナ侵攻と同様に、ロシアによる国際法違反の暴挙にほかならない。日本は「法の支配」を重視する立場で、無人島命名に強く抗議しなければならない。
主権侵害を認めるな
トランプ米大統領は近く、プーチン氏と首脳会談を行う予定だ。ウクライナの主権が侵害されている状態を認めることがあってはならない。
「米国第一」を掲げるトランプ氏だが、米国は民主主義陣営のリーダーだ。同盟国の日本はトランプ氏に自覚を促し、日米が共にウクライナを支援する姿勢を改めて示す必要がある。日米同盟の一層の強化によって北方領土返還への道も開かなければならない。





