
トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が会談し、米国の巡航ミサイル「トマホーク」の供与問題が話し合われたが、トランプ氏は慎重な姿勢を崩さず継続協議となった。
トマホーク供与に慎重
8月にウクライナ問題を巡り米露首脳会談が行われたが、これまでロシアのプーチン大統領は停戦に向けた協議に真摯(しんし)に応じる姿勢を見せていない。業を煮やしたトランプ氏は対露姿勢を硬化させ、ウクライナへのトマホーク供与を示唆するようになったのだ。
それを受け、今回の会談でゼレンスキー氏は、プーチン氏を交渉の場に引き出すにはトマホークが必要なことを強調した。また供与と引き換えに、ウクライナの国産無人機の生産開発について米国との連携を強化する意向も示した。
だが、飛距離の長いトマホークがウクライナに配備されれば、ロシアの首都モスクワやサンクトペテルブルクが射程圏内に含まれることから、ロシアの強い反発が予想される。現にプーチン氏は「トマホークの供与は米露関係の破壊に繋(つな)がる」と米国に圧力をかけている。
一方、供与を阻むべく、プーチン氏は今回の会談の前に先手を打ってトランプ氏と電話協議し、再度米露首脳会談を開くことで合意した。このプーチン氏の素早い対応でトランプ氏は対露姿勢を軟化させ、トマホークのウクライナ供与に慎重になったと思われる。
トランプ氏の変節を批判する向きもある。だが供与可能な数が限られているとはいえ、ウクライナが実際にトマホークを使用すれば、それを口実にプーチン氏が一挙に戦争を拡大させる恐れがある。トランプ氏も認めているように、トマホークは「戦争をエスカレートさせる危険な兵器」となる。それ故、ウクライナへの供与はあくまで対露圧力を強め、停滞する停戦協議を進めるための交渉材料(バーゲニング・チップ)とすべきで、戦争の安易な拡大に途を開くものであってはならない。
トランプ氏は今回の会談で「トマホークを供与せず戦争を終わらせることが望ましい」と主張。会談後にはSNSでロシア・ウクライナ両国に現状での停戦を呼び掛けた。近くハンガリーの首都ブダペストで開催予定の米露首脳会談でも、トマホーク供与を駆け引きに用い、プーチン氏に改めて停戦協議に応じるよう強く促すと思われる。
しかし、前途は決して楽観できるものではない。これまでの経緯を見ても戦勝を目指すプーチン氏が現状での停戦に同意するとは思えない。一方、ゼレンスキー氏も領土の一部を犠牲にしてまで戦争を終わらせることは難しいと語るなど、双方が早期停戦に応じる姿勢を見せない以上、戦争のさらなる長期化は避けられまい。
露の戦争継続能力を削げ
そのような厳しい状況の中、停戦を実現するには、米国は継続協議となったトマホークの供与問題で引き続きロシアに揺さぶりを掛けるとともに、同盟各国とも連携して対露経済制裁のさらなる強化徹底に努め、ロシアの戦争継続能力を削(そ)ぐことが必要である。






