
パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスとの和平案「第1段階」の合意に基づく人質解放、収監者釈放、ガザへの人道支援物資搬入が実施されたことを受け、和平に向けた首脳級会議が開かれた。和平案「第2段階」の合意形成を図り恒久和平に向けた取り組みを進展させるべきだ。
ハマスの武装解除が焦点
イスラエルがハマス壊滅に向けガザで本格的な地上作戦を進めようとしていたところ、中東の仲介国と米国の働き掛けで和平案が示された。イスラエル軍のガザにおける戦闘が本格化すれば、既に瓦礫(がれき)と化した都市をさらに破壊する焦土戦になる。
国際社会におけるイスラエル非難は、9月の国連総会でも示されており、併行して開催されたイスラエルとパレスチナの「2国家共存」を目指す首脳級会合では、パレスチナ国家を承認する国が続出している。これで承認国は国連加盟国の80%余りに達し、「2国家解決」が国際世論となっている。
発端は2年前のハマスによるイスラエル市民に対する大規模襲撃事件だったとはいえ、イスラエルの過剰報復によるガザの被害は大き過ぎる。米国のトランプ政権もイスラエルに対して歯止めをかける潮時を察し、また米国以外にイスラエルを制御できる国がないのも現実だ。米国が提案した和平計画には「第1段階」の中にガザからのイスラエル軍撤退があり、順守させるべきだ。
またハマスに対して仲介国のカタール、エジプト、トルコなどイスラム教圏の中東国は、重要な役割を担う。イスラエルから誘拐した人質の解放にハマスは応じ、イスラエル軍撤収、イスラエルに収監されていたパレスチナ人の釈放、人道物資搬入という取引を成立させた。
だが、「第2段階」では、ハマス自らの武装解除とガザの非武装化が大きな焦点になり、交渉は高度な判断を伴うものとなろう。エジプト東部シャルムエルシェイクで開かれた和平に向けた首脳級国際会議では、イスラエルとハマスが「第1段階」の合意をしたことを受け、双方の停戦合意の維持を支持する共同文書に署名した。
停戦合意履行は「第2段階」の交渉の大前提だけに、双方に徹底した順守を求めたい。ハマスの武装解除、ガザの非武装化、イスラエル軍完全撤退、アラブ諸国からの部隊展開などハマスを排除したガザの統治を見据えたステップだけに、ハマス側は難色を示すだろう。
だが、武力に訴えたイスラエルへの大規模襲撃が引き起こした、いわば“ガザ戦争”で犠牲になるのは一方的にパレスチナ人が多い。「人間の盾」は確かに国際社会のイスラエル批判を高めたが、ハマス排除もまたしかりでパレスチナ国家もそれなくして展望できない。
テロ組織排除し共存を
もともと、イスラエルとパレスチナが和平を結んだオスロ合意を潰(つぶ)すために活動してきたのがハマスだ。
テロやミサイル弾攻撃で紛争を恒常化させ、イスラエル消滅をもくろんだが、国際社会の大勢はテロ組織を排除した「2国家解決」にある。





