
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、184日間にわたった大阪・関西万博が成功裏に閉幕した。世界各国の多様な文化に触れる一方で、人工知能(AI)など科学技術の進歩がもたらす未来社会を考える機会となった。
2500万人超が来場
4月13日に開幕した大阪・関西万博は、国内開催では過去最多となる158カ国・地域、7国際機関が参加。来場者数は2005年の愛知万博(約2205万人)を上回り、2500万人を突破した。運営費の収支は最大280億円の黒字となる見通しだ。
閉会式で万博名誉会長の石破茂首相は「分断よりも連帯、対立よりも寛容を大切に、素晴らしい博覧会をつくり上げることができた」と挨拶。名誉総裁の秋篠宮殿下は「人類が直面している共通の課題への解決策について共に考える機会を得たことは、非常に意義深いことと思う」と述べられた。
「未来社会の実験場」をコンセプトの一つとし、「空飛ぶクルマ」のデモ飛行が行われ、AIやロボット、アンドロイドが来場者の関心を集めた。実用化にはまだ時間がかかるとしても、未来社会のイメージを提示した意義は大きい。
IT化の進展などで画像、動画で世界のさまざまな情報にインターネット上で触れることが可能になる中で、万博の魅力、開催の意義が低下しているとの見方もあった。だが、各国の多様な文化の一端ではあるが、実物に触れることの意義を改めて示す機会ともなった。
13日に採択された「大阪・関西万博宣言」では「参加者とホスト国は大屋根リングに体現される『多様でありながら、ひとつ』とのメッセージを世界に発信した」と成果を強調した。
会場のパビリオンを囲む一周約2㌔の大屋根リングは、大会のシンボルというだけでなく、世界最大の木造建造物ということで、それ自体が多くの来場者を呼び込む役割を果たした。人類の未来に大きな影響を与える最先端の科学技術が展示の目玉の一つとなる一方、木造建築が存在感を見せたのは、自然の生命が人類の未来に不可欠なもう一つの柱であることを示したとも言える。
大屋根リングは当初、閉幕後に全て解体・撤去する方針だったが、北東の約200㍍分がレガシー(遺産)として会場跡地に保存されることになった。また能登半島地震と豪雨の被害にあった石川県珠洲市が、復興公営住宅の建設資材として、リングの木材約1500本分を使用することが決まっている。その他の木材の量も膨大なものになるが、貴重な資源を有効に利用してほしい。
「並ばない」実現できず
大会運営ではいくつか課題も残した。「並ばない万博」を目指して「原則予約」システムを取ったが、結果的に大行列が常態化した。
炎天下の行列待ち、スマートフォンなしには満足に楽しむことは困難とのイメージが、本来であればもっと増える可能性のあった来場者数を減らした面も否定できない。今後、万博を開催する時の参考とすべきだ。





