2024年12月に阿部俊子文部科学相から中央教育審議会に諮問された次期学習指導要領の論点整理が、ほぼ出来上がり、素案から案に格上げされた。
指導要領は10年ごとに見直され、小学校・中学校・高校などの教育における「基本的な考え方」を示すもの。27年度の改定を目指し、時間をかけて各部会・教科ごとに細部や具体案を論議していく。
不確実性が高まる社会
少子高齢化、グローバル化が進み、子供たちの生きていく社会は、ますます不確実性が高まっている。特にICT(情報通信技術)機器の発達、生成AI(人工知能)の急速な普及などによって、デジタル技術の使いこなしが求められる時代になっている。
前回の改定における資質・能力の育成、主体的・対話的で深い学び(当初アクティブ・ラーニング、後に修正)の重視、学習過程の質的改善、柔軟なカリキュラム・マネジメントの形成などの方向性は間違っていないとされ、今回、より進化させることになっている。指導要領の横文字、問題の例示が専門的過ぎて難解だという指摘もあり、図解や例示を分かりやすくする努力も含まれている。
小学校の35人学級に不登校の児童が0・7人、不登校傾向が4・2人いる。原因はいじめ、授業についていけない、学習障害、経済格差などさまざまだ。海外にルーツがあるため家庭で日本語を話さず、宗教行事、風習などに周囲の子供が違和感を感じているケースもある。
1977年、98年の改定で強調され、2002年に本格導入された「ゆとり教育」は詰め込み教育を脱して子供たちの「生きる力」や「創造性」を育むことを目指した。後の改定で「脱ゆとり」に舵(かじ)が切られた。当時は成績の良い子供をより伸ばしたり、学習意欲に欠ける子供の底上げをしたりするための手立てがなかった。コロナ禍をきっかけに1人1台学習端末が支給され、上手な使い方をすれば、学習格差が縮小することが実証されている。
次期指導要領案では、各教育委員会、各学校に標準授業数、内容の組み替えを任せる裁量の幅を広く用いるとしている。全ての子供が大学の教授になったり、企業や大学で研究職員になったりするわけではない。この「裁量的な時間」については「子供の個性や特性、地方の特色など実態に応じた学習支援を行うことや教員研修、学校全体で取り組む研究活動に割り振ること」を視野に入れている。
先を見据えプロデュース
先生も子供も高いレベルの学習が求められている。こうした中、次期指導要領案では「生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる、民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育む」としている。
明治以降行われてきた一斉授業、正解主義的な学びから大きく脱却しようとしている。デジタル学習、個別最適な学び、協働的な学びを通じて先生が個々の児童・生徒と共に10~20年先を見据えてプロデュースしていく時代に変わろうとしている。





