トップオピニオン社説ガザ和平合意 恒久的平和への一歩とせよ【社説】

ガザ和平合意 恒久的平和への一歩とせよ【社説】

 2年にわたる激しい衝突に終止符を打てるかどうかの正念場だ。イスラエルとイスラム組織ハマスが和平案に合意した。第1段階が実施され、イスラエル軍の一部がパレスチナ自治区ガザから撤退を始めた。週明けにも人質が解放される見通しだ。

 トランプ氏が働き掛け

 まずは生存する20人の人質の解放を確実に実施することだ。イスラエルは人質解放を求める一方で、ハマスへの軍事的圧力を強化してきた。軍事行動については、イスラエル国内にも賛否はあった。人質に危険が及ぶ可能性はあるものの、攻撃を止め、テロ組織に人質を取ることが効果的な戦術と思わせることはあってはならない。

 合意は、トランプ米大統領の働きが大きい。イスラエル、ハマスににらみを利かせながら、エジプト、カタール、トルコに働き掛け、合意にこぎ着けた手腕は称賛に値する。

 だが、長期にわたって互いに殺戮と破壊を繰り返してきたイスラエル、ハマスがこのまま停戦を続け、ガザの恒久的な平和と安定につながるかどうかは予断を許さない。ハマスは「イスラエル破壊」という同じ目標を掲げるイランから支援を受けてきた。イランはイスラエルからの攻撃や国際社会からの制裁で弱体化しているものの、その動きには目が離せない。

 人質解放後の課題は、ハマスの武装解除とイスラエル軍の撤退だ。イスラエルは当初からハマスの無力化を目標としてきた。和平案では、イスラエルを攻撃するためのハマスのインフラの完全破壊をうたっている。これを確実に実行すべきだ。一方、ハマスへの恩赦、国外での受け入れの道も用意されている。テロ組織ハマスの復活を許さないよう、確実に実行してほしい。

 同時にガザ住民の人道状況の改善に早急に取り組まなければならない。国連の人道支援担当事務次長は早速、60日間の支援計画を発表した。食料、医薬品などの搬入を大幅に拡大する。破壊された病院の再建、避難民へのシェルターの提供も急務だ。イスラエルは今年に入り、支援物資の搬入を停止させ、食料、医療の不足などから大変な被害を地区内にもたらし、国際社会から大きな批判を受けた。支援、復興への協力で汚名をすすぐ時だ。

 イスラエルのネタニヤフ政権はこのところ強硬姿勢を強め、パレスチナとの「2国家共存」に対しても否定的な姿勢が目立つ。トランプ氏もこれに同調する姿勢を示していたが、ネタニヤフ首相が主張した占領地ヨルダン川西岸の併合を否定するなど、パレスチナへの配慮とも取れる発言が見られ始めていた。トランプ政権の20項目に及ぶ和平案では、イスラエルによるガザ地区の支配、併合を明確に否定している。困難は伴うものの、パレスチナ自治政府との共存はイスラエルにとって不可避だ。

 日本も役割を果たせ

 平和への道は緒に就いたばかりだ。パレスチナの復興、自立への道筋を付けられるよう国際社会も支援を怠ってはならない。日本も役割を果たせるはずだ。和平案を確実に実行し「恒久的平和」「共存」への足掛かりとすべきだ。

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