トップオピニオン社説自民党新体制 和の政治で慎重な舵取りを【社説】

自民党新体制 和の政治で慎重な舵取りを【社説】

臨時総務会で笑顔を見せる(左から)古屋圭司選対委員長、有村治子総務会長、麻生太郎副総裁、高市早苗総裁、鈴木俊一幹事長、小林鷹之政調会長=7日午前、東京・永田町

 自民党の高市早苗総裁が党人事を行い新執行部を発足させた。石破茂首相の総裁任期中に臨時総裁選を行うに至った国政選挙敗北の経緯から、挙党体制の構築が急務だ。「全員に馬車馬のように働いてもらう」との高市氏の党再生に向けた決意は理解できる。そのためには党内外にくまなく配慮した慎重な舵(かじ)取りが必要になろう。

 論功行賞の色彩濃い人事

 党内で最もリベラルな石破氏から、保守路線を掲げる高市氏へのバトンタッチは、これまで自民党政権が行き詰まるたびに繰り返された“疑似政権交代”そのものだ。党の要となる幹事長には鈴木俊一前総務会長、総務会長に有村治子元少子化担当相、政調会長に総裁選を争った小林鷹之元経済安全保障担当相が就任、副総裁には麻生太郎元首相を立てた。

 麻生氏および麻生派の鈴木氏、有村氏の起用から党役員人事に論功行賞の色彩が濃く表れたことは否めない。麻生氏は総裁選決選で党員票を反映させる流れをつくり、党員票でトップだった高市氏を支援。有村氏は参院選敗北後、党則に基づく臨時総裁選の実施について選挙管理委員会に対応を委ねることを決めた両院議員総会で議長を務めた。続投の姿勢を崩さなかった石破氏は、総裁選前倒しについて選挙管理委での議決を避けるため退陣を表明した。

 総裁選は、石破氏の路線継承を表明した小泉進次郎農林水産相、林芳正官房長官を高市氏が破ったが、1回目投票で295の国会議員票のうち高市氏の得票は、小泉氏、林氏より少ない64票だった。

 党員票に支えられたものの、高市氏は永田町の政治基盤を強化しなければならない。加えて国会では衆参とも少数与党であり、首相指名選挙に依然、不安を残している。忍耐強く他党との連立協議に臨む必要がある。

 幹事長に任命された鈴木氏は、「まずは党内の融和、党内一致を図っていく。みんなで心を一つにして難局に対応する」と語り、党内融和を最優先に据えた。高市氏の「全世代、総力結集」を実現するには、調整型の政治家である鈴木氏の役割を必要とするところだろう。

 鈴木氏の座右の銘である「以和為貴」は「和をもって貴しとなす」の意で、父親の鈴木善幸元首相も就任時に「和の政治」を唱えていた。1980年に鈴木内閣が発足した当時の自民党は「40日抗争」と呼ばれる激しい派閥抗争を経た後、政権にあった大平正芳首相が衆参同日選挙の最中に急逝する事態に見舞われていた。

 政権安定化の道を探れ

 今日の自民党は当時よりも危機的な状況にある。わずか1年のうちに総裁選を繰り返したが、石破氏が選出された昨年との決定的な違いは、自民党は公明党と共に少数与党になった現実だ。“石破降ろし”の遺恨は否めず、高市氏選出の“番狂わせ”も連立を組む公明党を相手に波紋を呼んでいる。

 公明党は参院選総括で「存亡の危機」との表現で危機感を強めている。自公連立与党の基本を踏まえ、意を尽くして最大公約数の形成に努め、政権安定化の道を探るべきだ。

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