トップオピニオン社説ハマス襲撃2年 暴力の連鎖に終止符を打て【社説】

ハマス襲撃2年 暴力の連鎖に終止符を打て【社説】

パレスチナ自治区ガザの中心都市ガザ市から避難する人々=3日(EPA時事)

 暴力の連鎖はいつまで続くのか。イスラム組織ハマスによるイスラエル襲撃から2年。パレスチナ自治区ガザでイスラエルによる掃討作戦が進行中だ。

 イスラエルが掃討作戦

 2023年10月7日の襲撃以降、パレスチナ人の死者は6万7000人を超え、そのうちの多くが戦闘員ではない住民だ。2年に及ぶ攻撃でガザ地区の大部分が破壊され、住民はハマス掃討作戦のために強制的に地区内を移動させられ、テント生活を強いられている。病院は既に大部分が破壊され、住民は医療を受けられず、衛生状態もよくない。食料支援も不十分で栄養不良による死者は100人を超えたとされている。

 イスラエル軍でも戦闘で300人超が死亡。襲撃当日のイスラエル人などの死者数は約1200人、約250人が人質として拉致され、ガザ地区内に拘束された。段階的に解放され、現在は残り数十人、生存しているのは20人ほどとみられている。

 2年間でこれほど大きな犠牲が払われた。

 ハマスが発足したのは1987年、第1次インティファーダ(対イスラエル民衆蜂起)の最中だ。以来、40年近くにわたって「イスラエルの破壊」を掲げ、武装闘争を繰り広げてきた。

 2007年にパレスチナ主流派組織ファタハと衝突。武力で地区を奪取し、以来実効支配してきた。04年に1970年代からパレスチナを率いてきたアラファト自治政府議長が死去。自治政府内が動揺していた時期でもあった。2005年にイスラエルがガザ地区から完全撤退したこともハマス有利に働いたのだろう。以来、ハマスはガザ地区からロケット砲などで攻撃し、イスラエルが反撃するという暴力の連鎖が続いてきた。

 イスラエルは、奇襲を受けてハマス殲滅(せんめつ)を掲げ、攻撃を続けてきた。ハマスとしては、単独でイスラエル軍と戦っては太刀打ちができるはずもない。襲撃後のパレスチナ全域、アラブ諸国での反イスラエル蜂起を期待したのだろう。その予想は見事に裏切られ、ハマスは既に息も絶え絶えだ。勢いづいたイスラエルのネタニヤフ政権は、レバノンのイラン系シーア派武装組織ヒズボラへの攻撃を強化。指導者を失ったヒズボラにかつての勢いはない。

 現在、米国の仲介でハマスとの停戦交渉が進められているが、戦闘の終結につながるかは見通せない。ネタニヤフ政権は強硬姿勢を強めており、パレスチナ独立の拒否を表明した。パレスチナ自治区のヨルダン川西岸の併合までちらつかせている。1994年に自治政府が発足して以来、目指してきた「2国家共存」は既に風前の灯火(ともしび)だ。

 パレスチナとの共存を

 ハマスの戦闘能力を奪うことは可能だろう。ただ、それは一時的なものにすぎない。憎しみが続く限り暴力がやむことはないからだ。根源的な暴力の排除につながる方策を模索すべきだが、事態は逆の方向に向かっている。ガザ地区、ヨルダン川西岸のパレスチナ人口は550万人、ヨルダン、シリアなどのパレスチナ難民は数百万人に達する。イスラエルの存続は、パレスチナとの共存にかかっている。

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