トップオピニオン社説9月日銀短観 米関税への懸念依然晴れず【社説】

9月日銀短観 米関税への懸念依然晴れず【社説】

 9月の日銀全国企業短期経済観測調査(短観)は、製造業、非製造業とも業況判断が、企業規模を問わず、おおむね横ばい圏となった。

 日米間で関税交渉が合意に達し、企業の懸念が和らいだからだが、安心はできない。日本に課された15%の相互関税などの影響がこれから本格化するため、先行きは軒並み悪化を見込む。米関税を巡る懸念を完全には払拭できないでいる。

 全体的に景気底堅さ示す

 企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業製造業でプラス14(前回プラス13)と小幅上昇し、2四半期連続で改善。大企業非製造業もプラス34と前回と横ばいだった。

 中小企業では非製造業でプラス14(同プラス15)と小幅下落し2期連続で悪化となったものの、製造業はプラス1(同プラス1)と横ばい。業況判断は企業の規模を問わず、おおむね横ばい圏で全体的に底堅さを示すものになった。

 米国による高関税が課されているにもかかわらず、全体的に底堅さが維持されたのは、やはり、日米間で関税交渉が合意し、不確実性が低下したことが大きいのだろう。

 7月の日米合意では日本の基幹産業である自動車の関税を27・5%から15%に下げることで一致。日米合意により、先月16日から適用が始まった。日本自動車工業会の片山正則会長(いすゞ自動車会長)は「壊滅的な影響は回避された」と安堵(あんど)。相互関税も15%で固まり、産業界には影響は想定の範囲内にとどまるとの見方も出ている。

 これが9月短観での大企業製造業の1ポイント改善につながり、自動車は2ポイント改善した。大企業製造業で特に2025年度設備投資計画が16・3%増と堅調だったのも肯(うなず)ける。

 大企業非製造業は、景況感の水準は依然高いが、横ばいだった。価格転嫁は進んでいるものの、家計の節約志向の高まりで個人消費は停滞、深刻な人手不足を受け人件費も増加、さらにインバウンド(訪日客)需要の一服も重なる。インバウンド需要の頭打ちは宿泊や飲食サービス業で景況感をプラス26(前回プラス45)と大きく悪化させた。

 ただ、やはり大きな問題はこれからだ。自動車関税は15%に収まったとはいえ、従来の2・5%からは大幅な引き上げであり、自動車大手6社は年間の影響額を計2兆6000億円超と見込む。影響は自動車メーカーにとどまらず、サプライチェーン(供給網)全体にも及んでいるという。

 関税の悪影響が今後本格的に表れるほか、原材料費や人件費の増加は引き続き見込まれる。先行きの景況感は大企業製造業で2ポイント、大企業非製造業6ポイント、中小企業製造業2ポイント、中小企業非製造業4ポイントの悪化としている。米関税への懸念は依然晴れないままだ。

 物価高でも難しい利上げ

 10月も3000品目以上の食料品の値上げが予定されるなど物価の上振れリスクも懸念される。日銀は追加利上げを検討しているが、米関税への懸念が払拭されるまで、当面は利上げは難しい状況といえ、すべきではないだろう。

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