
SNSでつながり、特殊詐欺や強盗などの違法行為を繰り返す匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)への対策を強化するため、警察庁と警視庁は専門の新組織を立ち上げた。国民の体感治安は悪化している。新組織発足をトクリュウの壊滅につなげなければならない。
取り締まりの標的選定
トクリュウが関与しているとされる特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺、インターネットバンキングの不正送金、クレジットカードの不正利用の合計被害額は、昨年1年間に約2600億円に上るなど深刻化している。昨夏以降に首都圏で連続発生した強盗事件にも関わったとみられている。
無力化には中枢人物の検挙が不可欠だが、摘発は実行役など組織の末端にとどまっているのが現状だ。昨年摘発されたトクリュウのメンバー約1万人のうち指示役や首謀者は1割にすぎない。4割がSNSなどを通じて集められた闇バイトで、逮捕された実行役らは上位者の素性を知らないことが多い。
首謀者が実行役との連絡に使う「シグナル」や「テレグラム」などのアプリは、メッセージが自動消去されたり、暗号化されたりして解析に時間がかかる。指示役らは複数のアカウントを使い分けており、グループの中間メンバーにたどり着けても、全体像の解明や上層部への「突き上げ捜査」は困難で、首謀者の早期摘発に向けた体制整備が急がれていた。
警察庁に新設された「情報分析室」は、都道府県警や刑事部門、生活安全部門といった組織の壁を越えてトクリュウに関する情報を集約。多角的に分析することで指示役や資金管理役などを洗い出し、取り締まりのターゲットを選定する役割を果たすものだ。まず首謀者を検挙し、上位から組織の全容を解明する新たな捜査の仕組みを構築する必要がある。
一方、警視庁は捜査の司令塔として「対策本部」を新設。副総監を本部長とし、約140人体制で適用法令の検討など戦略の立案を担う。全国の警察本部から人員を集めた専従捜査班「匿流ターゲット取り締まりチーム(略称・T3)」も設け、来春までに計200人に増強する予定だ。
また組織改編で刑事部と組織犯罪対策部を統合し、新刑事部に特殊詐欺やトクリュウ捜査に当たる450人体制の「特別捜査課」を設置した。海外も含め全国各地で活動するトクリュウの特性を踏まえ、警察当局は警察庁長官の指示で管轄を越えて捜査できる「広域組織犯罪捜査」の手法を適用することも視野に入れている。
ただ「寄せ集め」の組織でトクリュウ壊滅を実現できるか懸念する見方も出ている。取り締まりを強化するには、警察庁と都道府県警察との連携にとどまらず、全米のどこでも捜査・逮捕できる権限を持つ米連邦捜査局(FBI)のような「国家警察」の新設を日本でも検討する必要があるのではないか。
本格的な防諜機関創設を
FBIは外国のスパイを取り締まる機関でもある。日本もスパイ防止法を制定し、本格的な防諜(ぼうちょう)機関を創設すべきだ。






