トップオピニオン社説下水道管老朽化 防災上も重要な早期更新【社説】

下水道管老朽化 防災上も重要な早期更新【社説】

 設置から30年以上が経過した下水道管などのうち、緊急度の高い「要対策」と判定された管路の総延長が約300㌔に達することが、国土交通省の全国調査で判明した。

 国交省は下水道を管理する自治体に対策の早急な実施を求める方針だが、技術や財政面で十分に支援すべきだ。

 危険も伴う点検作業

 1月に発生した埼玉県八潮市での道路陥没事故を受け、国交省は3月、設置後30年以上で直径2㍍以上の管路約5000㌔を対象に、腐食、たるみ、破損などの状況を1年以内に調べるよう全国の自治体に要請。今回は優先実施箇所813㌔のうち8月時点で調査が終わった約621㌔について、35都道府県の約72㌔を原則1年以内に速やかな対策が必要な「緊急度Ⅰ」と判定。応急措置を実施した上で5年以内の対策を必要とする「緊急度Ⅱ」は36都道府県の約225㌔だった。

 老朽化した下水道管が破損して道路が陥没すれば、断水などの発生で社会や経済に深刻な影響を及ぼしかねない。八潮市の事故では、陥没箇所の幅が40㍍、深さは15㍍に達し、県内12市町の計約120万人が半月にわたって下水道利用の自粛を求められたほか、トラックが転落して運転手が死亡した。

 国交省の調べでは、上下水道に起因する道路の陥没は2022年度に1550件発生。水道管破裂による冠水も頻発している。昨年の能登半島地震では、耐震化していない設備を中心に被害が生じ、広範囲で断水が続いた。防災の観点からも、下水道管などの早期更新は重要だ。

 上下水道は料金収入で維持管理や改修の経費を賄うのが原則だが、人口減少による使用量の低下に加え、資材価格の高騰もあって経営環境は厳しく、更新費用を捻出することが難しくなっている。このため、大幅な料金引き上げに踏み切る自治体も出ている。

 インフラの維持管理は近年、定期的な点検によって致命的な不具合が生じる前にトラブルを把握して修繕する「予防保全」が主になっている。設備が長寿命化し、コストを抑えることができるとされている。

 ただ、下水道の点検作業には危険も伴う。埼玉県行田市では今年8月、下水道管の点検作業を行っていた作業員4人が硫化水素を吸い込んで死亡する事故が発生した。点検や清掃を担う建設業就業者の減少も大きな課題だ。効率的な検査には、ドローンや人工知能(AI)の活用が欠かせない。

 政府は6月、26年度以降の防災・減災、国土強靱(きょうじん)化に関する新たな実施中期計画を決定。5年間の事業規模は20兆円強で、このうち老朽化する上下水道などの耐震化に約10兆6000億円を投じる。

 十分な予算の確保を

 老朽化しているインフラは上下水道だけではない。23年時点で建設から50年以上となる施設は、道路橋が約37%、トンネルが約25%、河川管理施設が約22%に上る。維持管理や更新には多額の費用がかかる。自治体を支援する上で、国は国債発行も含め、十分な予算を確保する必要がある。

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