
国内で蔓延(まんえん)する違法なオンラインカジノの規制を強化する改正ギャンブル依存症対策基本法が施行された。
依存症になれば借金を重ね、人生を台無しにすることにもなりかねない。政府は違法性を周知徹底し、国民を有害情報から守らなければならない。
広告禁止の改正法施行
施行された改正法は、カジノサイトに誘引する広告や情報発信の禁止が柱。国内でカジノサイトやアプリを開設、運営することを違法とすることも明記した。警察庁が委託してインターネット上の有害情報を監視する「インターネット・ホットラインセンター」が、こうした広告などを「違法情報」としてプロバイダーやSNS管理者に削除要請を出す仕組みだ。
警察庁の推計によると、違法なオンラインカジノの経験者は国内で約337万人、年間の賭け金総額は約1・2兆円に上る。多くは海外では合法的に運営されているサイトだが、国内からアクセスして金を賭ければ刑法の賭博罪に該当する。
しかし違法だとの認識があったのは経験者の4割にすぎず、特に20代の認識率が低かった。ネット上では「グレーゾーンで取り締まることができない」といった偽情報が流れ、著名人がカジノサイトのCMに出演したことも蔓延を招いたと言える。芸能人やスポーツ選手らが摘発されたケースも多い。
スマートフォンで手軽にアクセスできるオンラインカジノは、他のギャンブルと比べても依存症となるリスクが高い。オンラインカジノで繰り返し賭博をしたとして常習賭博罪に問われ、東京地裁で懲役1年、執行猶予3年の判決を言い渡された元フジテレビ社員は、賭けに負けて借金を繰り返し総額が2000万円を超えた。社内調査で戒告処分を受けた後もやめることができず「勝てれば借金を返済できる」との思いからのめり込んだという。政府はオンラインカジノの違法性と共に依存症の恐ろしさについても情報発信を強化すべきだ。
依存症のほか、悪質なカジノサイトであれば個人情報が流出するリスクもある。利用防止には、サイトへの接続を強制的に遮断する「ブロッキング」の導入も欠かせない。ただ通信事業者が全利用者の接続先などを確認する必要があるため、憲法などで保障された「通信の秘密」や「知る自由・表現の自由」に抵触する恐れがある。
だが児童ポルノサイトに関しては、子供の保護は通信の秘密に優先すると判断され、「緊急避難」との法解釈で2011年からブロッキングが行われている。オンラインカジノによる依存症も極めて深刻であり、同様の法解釈は可能ではないか。
ブロッキングの導入急げ
総務省の検討会はブロッキングについて、7月にまとめた中間論点整理で①必要性や有効性②導入で得られる社会的利益の大きさ③新規立法が必要かどうか④具体的な制度の内容――の4段階で導入に向けた検討作業を進める方針を示した。
検討会では年末をめどに実施の是非について方向性を出すとしているが、できる限り早期の導入が求められる。





