トップオピニオン社説自民党総裁選 党存亡の危機感はあるのか【社説】

自民党総裁選 党存亡の危機感はあるのか【社説】

所見発表演説会を終え、ポーズを取る自民党総裁選に立候補した5氏。(左から)小林鷹之元経済安保相、茂木敏充前幹事長、林芳正官房長官、高市早苗前経済安保相、小泉進次郎農水相=22日午後、東京・永田町の同党本部

 石破茂首相の辞任表明に伴う自民党総裁選が告示され、来月4日投開票までの12日間の選挙戦がスタートした。先の参院選の結果、衆参両院で少数与党に陥っただけに、自民党としては強固な党再建を託せるリーダーを選ばねばならない。

 薄れる「自民党らしさ」

 立候補者には、目先の政策課題への対応や連立の枠組みの議論ばかりをせず、国家観や長期的なビジョンを示しつつ、解党的出直しの原点をどこに定めるのかなど、強い危機意識を持った骨太の論戦を望みたい。

 今回、立候補したのは茂木敏充前幹事長、小林鷹之元経済安全保障担当相、小泉進次郎農林水産相、林芳正官房長官、高市早苗前経済安保相の5人。いずれも昨年の総裁選に出馬した顔ぶれだ。国会議員だけでなく、党員・党友の声も反映させて投票するフルスペック方式となった。参院選大敗の「総括」で「解党的出直しに取り組み、真の国民政党に生まれ変わる」としただけに、党内の民意がより反映される形となったことは評価したい。

 ただ、全ての立候補者の出馬会見を聞く限り、党勢が著しく低下し存亡の真っ只中にあるとの危機感は感じられなかった。「解党的出直しをする」と訴えても、どんな政治理念と国家ビジョンを定めて党の再スタートを切ろうとしているのか全く分からない。

 5氏は、国民の声の反映や政治資金の透明化などの党改革を主張するが、本気で党を立て直す気概はあるのか疑問だ。

 5氏はまた、臨時国会での首班指名選挙を意識し、連立の枠の拡大に触れている。政権の維持を図るのは当然としても、これでは保守政治を牽引してきた「自民党らしさ」や党の存在意義はますます薄れていく。

 前回の総裁選で第1回投票で1位になりながら決選投票で敗れた高市氏は「基本政策が合致する野党と連立を組むことも考えたい」と指摘。国民民主党が唱える「年収の壁」引き上げに賛成を明言する一方、日本維新の会が掲げる「副首都構想」を事実上、支持する考えを示した。

 高市氏に聞きたいのは、以前から主張してきた「首相に就任しても靖国神社に参拝する」との意向に変化がないのか否かだ。党内の国会議員票や公明党への配慮から高市色を薄めるようでは、高市氏の保守政策に賛同してきた多くの党員・党友の落胆と離反を招きかねない。

 「大きなことを言うよりも、まず党がしっかりまとまり、一つになれる環境をつくれるかどうか」が重要だとする小泉氏には、結集軸を何にするかを問いたい。目先の諸政策ばかりを掲げ、危機感を煽っていても、党の再生を確固としたものにはできないのだ。

 存在意義の明確化を

 全ての候補者には、70年前の結党綱領に対する評価をしつつ、党の存在意義を明確に示し、「戦後レジームからの脱却」がなされているのか、未達の点があればそれは何かを指摘してもらいたい。野党に揉み手で接近しても、一時的な政権継続はできても、解党的出直しどころか溶解してしまいかねないことを肝に銘じるべきだ。

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