国民民主党や日本維新の会が党内でスパイ防止法制定についての議論を開始した。
日本は「スパイ天国」と呼ばれて久しい。国家と国民の安全を守り、国益を保護するため、自民、公明両党の与党も協力して早期に制定すべきだ。
国民民主や維新が議論
7月の参院選では国民民主や維新のほか、日本保守党もスパイ防止法制定を公約に掲げた。自民は導入に向けた検討を公約し、参政党も制定を主張した。
国民民主は法制定に関する検討チームの初会合で「国民の自由と人権の尊重」や「国家の存立と主権の擁護」、インテリジェンス関係省庁職員の保護を主な論点に議論を進める方針を確認。今後、有識者からの意見聴取を重ね、与野党各党と協議したい考えだ。
維新もスパイ防止法について検討するタスクフォースの初会合を開催。党安全保障改革調査会長の前原誠司前共同代表は「認知戦や情報戦に対応しなければ自国の安全を守れない」と強調し、外国勢力の選挙介入対策を講じる必要性も訴えた。
情報保全を巡っては、2013年12月に機密情報を漏洩(ろうえい)した者への罰則を強化する特定秘密保護法が成立。防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止の4分野で、閣僚ら行政機関の長が「特定秘密」を指定し、漏洩した公務員、民間人は最高10年の拘禁刑を科される。今年5月には、経済安全保障上の重要情報を指定し、その情報を取り扱える人物を政府が認定する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度も始まった。
ただ、スパイ防止法はスパイ活動そのものを摘発するための法律だ。諸外国と同水準の法律を制定すれば、機密保護を強化するだけでなく、同盟国や友好国との機密共有をスムーズに進めることもできるだろう。
自民は1985年、最高刑を死刑とする「国家秘密法」を議員立法で提出したが、基本的人権を侵害するなどの反発を受けて廃案になった。しかし中国やロシア、北朝鮮のスパイが暗躍する現在、国益を守るにはスパイ防止法が不可欠だ。スパイ防止法があれば、中国で反スパイ法によって拘束された邦人を「スパイ交換」によって取り戻すこともできる。
日本は相手から武力攻撃を受けた時に初めて防衛力を行使する「専守防衛」のような受動的な防衛政策を取ってきた。だが日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、2022年12月には安保3文書が改定され、敵のミサイル基地をたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)保有が明記された。また今年5月には、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐため、攻撃の兆候があれば警察と自衛隊が攻撃プログラムを除去する「能動的サイバー防御」の導入法が成立するなど防衛政策が積極的なものとなりつつある。
与野党は「積極防衛」を
スパイ防止法制定に向けた動きも、機密漏洩防止にとどまらず、機密を盗み取ろうとするスパイを取り締まるという意味で「積極防衛」の流れの中にあるものだと言えよう。
与野党は制定を実現しなければならない。





