トップオピニオン社説立憲民主新体制 多党化の流れに抗えるのか【社説】

立憲民主新体制 多党化の流れに抗えるのか【社説】

握手する自民党の森山裕幹事長(左)と立憲民主党の安住淳幹事長=16日午後、国会内

 参院選を「敗北」と総括した立憲民主党は幹事長を交代させるなど執行部人事を行い新体制を発足した。新たに就任した安住淳幹事長は、あくまでも政権交代を目指す立ち位置を確認し、自民党と対峙(たいじ)し得る政党は立民だけと野党第1党としての存在感をアピールするが、多党化の流れに抗(あらが)えるのか。

 「政権交代」をアピール

 安住氏は当選10回のベテランで民主党政権時代には主要閣僚の財務相を務めた。一方、政調会長に当選2回の若手衆院議員である本庄知史氏を抜擢(ばってき)してベテランと若手のバランスを図るとともに、野田佳彦代表とこれまで距離を置いていた党内最大グループ「サンクチュアリ」から代表代行に近藤昭一衆院議員を入れ、さらに元政調会長の逢坂誠二衆院議員を選対委員長に据えた。野田氏としては挙党態勢を敷いて首相指名選挙を控える国会に臨む構えだ。

 安住氏は「政権交代」を改めてアピールし、野党が多党化しても筆頭格は立民であると自負する。昨年の衆院選においては野田氏も「政権交代」を訴え、与党を少数に追い込んだことは事実だ。

 だが、7月の参院選では比例区総得票数で参政党や国民民主党の後塵(こうじん)を拝した。その上、石破茂首相の続投を延々と許した。野党側は自民内の「抗争」として非難するが、野党の支持層から「石破辞めるな」の声は上がっても、衆参で多数である野党側に政権を取れとは聞こえてこない。その意味で、参院選は「事実上の敗北」だったとする立民の総括は正しい。

 消費税減税、ガソリン税暫定税率ゼロなどの党内議論は些末(さまつ)な議論にすぎない。立民は国民民主と共に、元は同じ民主党だったが、かつて3000万票を獲得して自民から政権を奪った大政党を粉々にしてしまった政治家たちが、分裂を招いた政策問題で一致すべきだろう。

 一つに原発問題がある。民主党政権時代に不幸にも東日本大震災が生じて巨大津波による原発事故が起きた。反核運動の活動家らの支援を受けた当時の政権は「原発ゼロ」政策を打ち出して日本中の原発を止めた。

 代替に再生エネルギーを奨励したものの、今日、太陽光パネルは山奥の山林を伐採するなど環境問題が起きており、熊が住宅地に現れる一つの原因とも指摘されている。洋上風力発電は採算性の問題から三菱商事が撤退。これらの事象を刮目(かつもく)し、現実的な原発政策を採り、国民民主との垣根を低くすべきだろう。

 また首相だった野田氏が自民、公明と「社会保障と税の一体改革」を進めた経緯から、消費税増税派だったことが野党間の連携を妨げている。党内の減税論を排除せずニュートラルな考え方はできないものか。

 過去の体験に縛られるな

 1993年衆院選で自民は負けても比較第1党だった。野党第1党は社会党だったが、日本新党から首相を選ぶことで政権交代したことを、日本新党から政界に登場した野田氏はじめ立民創党者の枝野幸男氏らは忘れるはずはないだろう。民主党時代の政権交代体験に縛られず、今の立民は、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、ではないのか。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »