
日本生命保険は、銀行などの販売代理店に出向した社員が、2019年5月からの約6年間で計604件の内部情報を無断で持ち出していたことを明らかにした。情報の不適切な取り扱いは容認できない。
出向先の情報持ち出す
日本生命では今年7月に三菱UFJ銀行への出向者による不正が発覚。その後の調査で、三菱UFJ銀など7社に出向した13人と、日本生命側で情報を受け取った23人が関与していたことが明らかになった。情報の持ち出しについて、日本生命は「不正競争防止法における営業秘密保護の趣旨に照らして適切ではなかった」と説明。今後、関係役員を含め、社内処分を検討するとしている。
出向者13人は業績の拡大などを目的に、出向先の上司などから許可を得ずに「保険販売に関わる業績や行員の業績評価基準、他の生命保険会社の商品」の内部情報を持ち出していた。こうした情報はスマートフォンのメッセージアプリや郵便で日本生命の金融法人部門に送り、役員や部長を含め最大約270人と共有していたという。同様の不正は子会社でも行われていたことが判明した。
不正が調査期間より前にあったかについて、日本生命は「可能性は否定できない」としている。徹底調査で全容を明らかにしなければならない。
保険業界では、代理店に出向した社員が競合他社の顧客情報を出向元に漏洩(ろうえい)していた問題や旧ビッグモーターによる保険金不正請求、企業向け保険料の事前調整などの問題が相次いだ。特に損害保険会社は旧ビッグモーターのような有力な代理店の経営に配慮せざるを得ず、出向がなれ合いを生む温床になっていた。このため日本損害保険協会は24年9月、保険会社から代理店へ営業目的で出向者を出すことを禁止した。
日本生命も大手生保では初めて、26年度以降に代理店や銀行への出向を廃止することを決定していた。その矢先の不正発覚である。信頼回復は容易ではあるまい。
金融庁は保険業界の監督を強化するため、26年度中に「資産運用・保険監督局」(仮称)を新設する。金融機関を監督する監督局を分割し、切り離した資産運用課と保険課を資産運用・保険監督局に移す。業界の不祥事根絶に向けて責任を果たしてほしい。
今年5月には改正保険業法が成立した。規模の大きい乗り合い代理店約100社に対する規制強化が柱で、営業所ごとにコンプライアンス(法令順守)責任者、本店には統括責任者を置くことを義務付けるものだ。保険会社が契約企業の商品を購入するような過度な便宜供与も禁止する。法改正を保険業界の体質改善につなげる必要がある。
「顧客本位」に立ち返れ
日本生命は今回の不正の背景について、出向者は無断で情報を持ち出すことが不適切だと認識しながらも、自身の評価につながると期待したと分析した。極端な売り上げ至上主義が社員の倫理意識の低下を招いているのだとすれば見過ごせない。顧客の最善の利益を追求する「顧客本位」に立ち返るべきだ。






