将来の防衛装備品開発につながる技術の基礎研究を支援する「安全保障技術研究推進制度」の採択件数が2025年度、過去最多の49件になった。
覇権主義的な動きを強める中国や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威が高まる中、安全保障を強化する上で、軍事と民生の両方に利用できる技術「デュアルユース」の重要性が増している。防衛省は支援の充実に努めてほしい。
大学の応募数が増える
25年度の応募総数は過去最多の計340件に上った。このうち大学が123件と前年度の3倍近くに急増し、採択件数は前年度比2・5倍の20件。東北大や日本大など7大学は初めて選ばれた。
この制度に関しては、日本学術会議が17年3月に「政府による介入が著しく、問題が多い」とする批判声明を出したこともあり、大学からの応募は毎年10件程度にとどまっていた。学術会議は1950年と67年に「軍事目的の科学研究を行わない」とする声明を発表し、2017年の声明ではこれを継承するとしている。頑(かたく)なな姿勢が大学側を萎縮させたことは残念だ。
科学技術の急速な進歩で軍事と民生の区別をつけるのは困難になっている。私たちの生活に欠かすことのできないインターネットや全地球測位システム(GPS)も、もともとは軍事技術だった。
学術会議も22年7月、「科学技術を(軍事への)潜在的な転用可能性をもって峻別し、その扱いを一律に判断することは現実的ではない」として、デュアルユースの研究を事実上容認せざるを得なくなった。遅きに失したとはいえ、当然の判断だと言えよう。
しかし、学術会議のデュアルユース容認後も学術界では安全保障に関与することへの忌避感が根強い。25年度の公募から従来の「委託」事業に加え、大学などが自主的に行う研究の「補助」事業が新設されたが、これは「委託」では応募しづらいとの意見が出たためだ。学術界の自由な研究を妨げている面があるのであれば、学術会議は三つの声明の撤回も検討する必要がある。
25年6月には学術会議を「国の特別な機関」から特殊法人に改編する新しい日本学術会議法が成立した。新法では、学術会議を「わが国の科学者の内外に対する代表機関」と位置付け、国から必要な財政支援を行う一方、会員外から首相が任命する評価委員会や監事を新設し、活動内容や財務を監査する。
1949年に発足した学術会議は、当初から日本共産党が浸透工作を進めてきた。三つの声明も共産党の「空想的平和主義」から大きな影響を受けていると言っていい。学術会議は新法にも反発し、国からの介入に懸念を示している。だが、ナショナルアカデミーが特定のイデオロギーに左右されることがあってはなるまい。
軍事忌避では平和守れぬ
軍事忌避で平和を守ることはできない。デュアルユースを抑止力向上に生かして戦争を起こさせないためにも、学術界の活発な研究と政府の手厚い支援が求められる。






