トップオピニオン社説川崎ストーカー あまりにも重い警察の責任【社説】

川崎ストーカー あまりにも重い警察の責任【社説】

検証結果を受け、記者会見で謝罪する神奈川県警の和田薫本部長=4日午前、横浜市

川崎市でアルバイト岡崎彩咲陽さんが元交際相手に殺害された事件で、神奈川県警が岡崎さん側からの相談にストーカー事案として適切な初動対応ができなかったことを認め、「対処体制が形骸化し、組織的問題があった」と総括する検証報告書を公表した。救えたはずの命が奪われたことは痛恨の極みである。

県警本部と署の連携不足

岡崎さんと家族は昨年6月以降、白井秀征被告(殺人罪などで起訴)からの暴力や付きまとい行為をたびたび川崎臨港署に相談。一時沈静化し、昨年12月に被害が再開したが、申告を受けた署はストーカー事案として対処せず、この月の20日ごろ岡崎さんは行方不明になった。県警が白井被告宅で遺体を発見したのは今年4月だった。

報告書は、岡崎さんが行方不明となる前の県警の対応について、本部と署の連携や情報共有が不十分で、昨年11月に被害が沈静化したという判断も署単独で行われたと指摘。収束したとの先入観や署員の知識不足が、12月の再相談をストーカー事案と扱わない不適切な対応につながったとし、組織的に初動対応していれば安全確保措置ができた可能性があったと述べた。

署が沈静化したと判断したのは、白井被告と岡崎さんから復縁の申し出があったためだ。だが被害者が身を守るために復縁するケースもあり、警察は継続的に関与すべきだった。

人身安全事案について県警の規定は本部の役割が不明確で署への指導が行われず、署長の指揮が機能しないなど署の体制も形骸化していた。岡崎さんは行方不明になる直前の12月9~20日に計9回も通報していた。必死に助けを求めた女性を救えなかった責任はあまりにも重い。

ストーカー被害を巡っては、1999年の「桶川ストーカー殺人事件」以来、警察に相談していたにもかかわらず、被害女性らが命を奪われるケースが繰り返されてきた。桶川の事件の翌年には、付きまといなどへの禁止命令を出せるストーカー規制法が成立。規制法はメールやSNSを規制対象に加えるなど改正を重ねてきたが、改正後に殺害された女性もいる。

警察庁によると、2024年の規制法違反の検挙は過去最多の1341件。全国の警察に寄せられた相談は2万件近くに上った。悲劇を防ぐには、警察の組織改革と共に厳罰化が避けられない。欧州諸国は規制法ではなく、刑法の中に付きまとい罪を加えるのが一般的だ。規制法の定める罰則が、1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、禁止命令違反のケースでも2年以下の拘禁刑か200万円以下の罰金であるのに対し、ドイツやカナダでは付きまとい罪の最高刑が10年であり、ストーカー行為は重罪だと認識されている。

加害者を治療につなげよ

加害者を治療やカウンセリングにつなげる取り組みも強化する必要がある。警察は16年からこうした取り組みを進めているが、24年に治療などを働き掛けた加害者3271人のうち実際に受診したのは184人にとどまる。米国やカナダの一部の州では、裁判所が治療などを義務付ける命令を出せる。日本もこうした制度を導入すべきだ。

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