トップオピニオン社説「抗日戦勝」80年 中露朝連携のプロパガンダ【社説】

「抗日戦勝」80年 中露朝連携のプロパガンダ【社説】

3日、中国・北京の天安門広場で、軍事パレードを前に並んで歩く習近平国家主席(手前中央)、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(手前右)、ロシアのプーチン大統領(手前左)(AFP時事)

中国の習近平政権は「抗日戦勝80年」を記念する軍事パレードを催し、26カ国の首脳らが参加した。中でもロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が、習国家主席と並んでパレードを見守り注目された。3氏が初めてそろった歴史的イベントとなり、正恩氏にとっては6年半ぶりの訪中、また初の多国間外交の舞台ともなったからだ。

日米への対抗姿勢誇示

第2次世界大戦の終戦から80年目の今年、中国は抗日戦争で自らが果たした役割を強調している。7月には習氏がブラジルでの新興国グループ「BRICS」首脳会議を欠席してまで山西省陽泉市に出向き、抗日戦の記念碑に献花した。

また「南京写真館」など日中戦争を描いた映画が複数公開されている。いずれも日本軍による虐殺シーンなど事実と異なる反日プロパガンダの代物だ。そもそも先の大戦で主に日本軍と戦ったのは中国国民党の軍隊であり、中国共産党ではない。

歴史を捏造(ねつぞう)し、国民の愛国心やナショナリズムに働き掛けて反日意識を煽(あお)るとともに「共産党の勝利」を宣伝するのは、長引く不況で不満が強まる中、習指導部の求心力を高めるとともに、一党支配の正当性を訴え批判を抑える必要があるからだ。国際的には、上海協力機構首脳会議と軍事パレードへの各国首脳の参加を誇示して発言力を高め、米国への対抗姿勢を強調する意図が込められている。

一方、プーチン氏は訪中に先んじてメディアに対し、旧ソ連の赤軍と中国軍が日本に勝利し大戦に終止符を打ったと主張。習氏との首脳会談でも中国のプロパガンダに同調した。中国との戦略関係や共闘姿勢を強め、共に日米同盟に対抗する意思表示だ。また、プーチン氏は日本が「軍国主義を復活させつつある」と非難。日本に「軍国主義」、ウクライナに「ネオナチズム」という虚構のレッテルを貼り、侵略戦争や対日威嚇を正当化する狙いも読み取れる。

北朝鮮を巡っては、接近が進む対露関係に比し、中朝関係の疎遠さが指摘されてきた。今回の正恩氏訪中でバランスを回復させたと言える。中露を背後に据え米朝対話再開に備える狙いもあろう。経済発展に中国の支援が不可欠な事情もある。また北朝鮮の最高指導者としては異例だが、各国首脳が参加する行事に登場し、北朝鮮の国際性を印象付けて正恩体制の権威を強調する意図もうかがえる。ロシア派兵で多数の犠牲者を出し、北朝鮮国内で強まる反発を抑える必要にも迫られているのだ。

自由陣営は手強さ覚悟を

トランプ米政権の高関税政策で自由主義陣営の動揺と混乱が続く中、今回の軍事パレードで体制を引き締め米国主導の国際秩序に対抗しようとする中国の姿勢が鮮明化した。中露朝首脳の揃(そろ)い踏みで、権威主義勢力の連携の強さと存在感を世界にアピールする式典ともなった。

しかし、その華やかさやプロパガンダに惑わされてはならない。中露朝も一枚岩ではない。法の秩序と民主主義を守り抜き、手強(てごわ)い権威主義勢力を抑え込む覚悟が日本をはじめ自由陣営には必要だ。

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