
石破茂首相は来日したインドのモディ首相と会談し、日印の経済連携の拡大と安全保障を含めた協力の深化で一致した。
安保共同宣言を改定
両首脳は安保協力に関する共同宣言を17年ぶりに改定。防衛装備品の共同開発に向けた協力や、サイバーセキュリティーなど先端技術での共同研究の促進を盛り込んだ。共同声明には、鉱物や半導体など経済安保の観点から重要な物資のサプライチェーン(供給網)強化を図る枠組み「経済安保イニシアティブ」の立ち上げを明記。インドに対し今後10年間で10兆円の民間投資を目指すとともに、今後5年間で人工知能(AI)分野など高度人材を含む50万人以上の交流を実現する方針も打ち出した。
インドの国内総生産(GDP)は今年中にも日本を抜く見込みだ。そうすれば、米中独に次ぐ世界第4位の経済大国に浮上する。人口減少が顕著で不動産バブルの崩壊など構造問題を抱える中国に比べ、14億人という世界一の人口を擁し、しかも若年層が厚いインドの潜在力は大きなものがある。しかも国土は広大で十分な開発余地がある。
しかしロシアのウクライナ侵攻で、インドは国連安全保障理事会や総会でロシア非難決議の採決を棄権した。中国の新疆ウイグル自治区の人権問題ですら同様だ。世界最大の民主主義国であっても自由と民主という理念に立脚した判断ではなく、国益に軸足を置いた決定を下す。
モディ氏は日本訪問後、訪中し上海協力機構首脳会議に出席した。上海協力機構はインドやパキスタン、イランの加盟でユーラシア大陸の5分の3を占め、大陸の東西を陸路と海路で結ぶ一帯一路政策と合わせ中国が安全保障と経済の糸で絡め取る政治的ツールになっている。
首脳会議には加盟国であるロシアのプーチン大統領やイランのペゼシュキアン大統領ら20カ国以上の首脳級が出席。中国は従来の欧米主導型国際秩序に対抗し、米国との中長期的な対立を見据えた上で、自国に有利な国際秩序を築こうとしている。
そのため、新興・途上国「グローバルサウス」の盟主役であるインドの取り込みに動き出した。モディ氏を迎えた習近平国家主席は「今日の世界は100年に一度の大変革に見舞われている」との時代認識を示した上で「竜と象が共に舞うことが正しい選択だ」と語った。
何としても避けなければならないのは、インドが中露陣営に軸足を移す事態だ。トランプ米政権は、ロシア産の原油を購入しているとして、インドに課す関税を従来の2倍となる50%に引き上げた。近隣の東南アジア諸国連合(ASEAN)が20%前後である中、ブラジル並みの高関税となる。また8月30日付米紙ニューヨーク・タイムズは、トランプ大統領は日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」の首脳会合が今年秋に開かれるインドを訪問する計画はないと報じた。
日本の使命は大きい
だが、米印対立が深刻化すれば中露を利するだけだ。特に覇権主義的な中国の海洋進出の舞台であるインド太平洋で、インドの動向は安定のカギを握る。米印の仲介役が期待される日本の果たすべき使命は大きい。





