防衛省が長射程ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」の地上発射型を2025~26年度に陸上自衛隊の健軍駐屯地(熊本市)、27年度に富士駐屯地(静岡県小山町)に配備すると発表した。このミサイルは1000㌔程度の飛翔が可能で、熊本からは中国大陸沿岸部が射程圏に入る。中国や北朝鮮の脅威が高まる中、長射程ミサイル配備を含む反撃能力(敵基地攻撃能力)の整備を急ぐ必要がある。
運用担う統合作戦司令部
艦艇発射型と航空機発射型に関しては、運用開始を1年前倒しし、27年度に神奈川県と茨城県の基地に配置。地対地ミサイル「島しょ防衛用高速滑空弾」は北海道や宮崎県の駐屯地に配備する。いずれも、敵の射程圏外から攻撃する国産の「スタンド・オフ・ミサイル」だ。
政府は22年12月、外交・安全保障の基本方針となる「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の3文書を改定。防衛費を27年度に国内総生産(GDP)比2%とする目標を掲げたほか、反撃能力の保有を明記した。軍事行動を活発化させる中国や北朝鮮などに対処するためだ。
このたび防衛省は、26年度予算の概算要求総額が過去最大の8兆8454億円になると発表した。このうち、スタンド・オフ防衛能力の整備に1兆246億円を確保。12式地対艦誘導弾能力向上型の関連予算に2160億円を要求したほか、音速の5倍以上で飛び、迎撃が困難な「極超音速誘導弾」の量産に着手するため、地上装置や開発・研究費を合わせ1047億円を盛り込んだ。反撃能力の一層の向上が求められる。
反撃能力を効果的に運用するには、目標を正確に探知することも欠かせない。このため政府は、多数の小型衛星による「衛星コンステレーション」の整備を進めている。特定地点を高い頻度で観察できるため、発射台を備えた車両や艦艇など、相手部隊の動向をこまめに把握することが可能となる。
今年3月に発足し、陸海空3自衛隊を一元的に指揮する統合作戦司令部は、反撃能力の運用の中核を担う。従来の陸海空に加え、宇宙やサイバー空間も対象とする現代戦では、各分野を組み合わせて相乗効果を出すことが重要だ。反撃能力はその最たるものであり、訓練などで知見を蓄積してほしい。
反撃能力整備では米国製巡航ミサイル「トマホーク」も配備されるため、米軍との情報共有も重要性を増す。共有を進めるには、情報保護体制の強化も不可欠だと言えよう。13年12月に成立した特定秘密保護法は、防衛分野を含む機密情報を漏洩(ろうえい)した者への罰則を強化したものだが、これに加えてスパイ行為そのものを取り締まるスパイ防止法も制定すべきだ。
憲法9条改正を急げ
従来、日本防衛に関しては、自衛隊が盾、米軍が矛という役割分担があった。だが、日本の反撃能力整備で役割が変わり始めている。米国でトランプ政権が「米国第一」を掲げる中、日本は防衛力を一段と強化しなければならない。日本の防衛政策を過度に抑制的なものとしてきた憲法9条の改正が急がれる。





