政府は東京電力福島第1原発事故に伴う除染で生じた「除染土」について、福島県外での最終処分に向け、今後5年程度の取り組みを整理した工程表(ロードマップ)を決定した。
候補地の選定や調査を2030年ごろに始めると明記するとともに、除染土の再生利用を地方に広げる方針も盛り込んだ。福島の復興につなげなければならない。
省庁や地方機関で利用
福島県内の中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)に現在保管されている除染土は約1400万立方㍍。このうち4分の3に当たる、放射能濃度が1㌔㌘当たり8000ベクレル以下の土に関しては再生利用を進める。
8000ベクレル以下であれば、近くで作業しても被曝(ひばく)線量が年1㍉シーベルト以下で国際的な安全基準に合致している。また再生利用時には、飛散防止のため通常の土で周囲を覆うため、除染土から放出される放射線の9割以上を遮断できる。
これまで県外での再生利用は住民の反対で頓挫するなど難航してきた。今秋にも環境省に設置される有識者会議では、除染土の安全性を強調するため「復興再生土」などの新たな呼称についても議論するという。活用には国民の理解を広げることが欠かせない。
再生利用は今年7月から首相官邸で始まった。植栽の下地として使われているが、特に問題は発生していない。9月からは中央省庁が入る東京・霞が関の9庁舎の花壇などでも実施する予定だ。
地方にある出先機関や各府省が所管する法人でも活用を検討する。公共事業のほか、民間企業が行う土地造成や盛り土、埋め立てなどでも30年ごろまでに先行事例を作り、本格利用に向けた道筋を付ける。
一方、残りの8000ベクレル超の除染土は45年3月までに県外で最終処分することが法律で定められている。工程表では、35年をめどに処分場の仕様の具体化や候補地の選定を行うとしている。だが、選定の見通しは全く立っていない。
工程表決定を受け、福島県の内堀雅雄知事は「一定の前進」と評価しながらも「候補地選定後の最終処分場の用地取得、建設、運搬等、具体的なプロセスやスケジュールが明確に示されていない」と指摘。「依然として中間貯蔵施設の立地町や県民が県外最終処分の見通しを実感できない」と述べている。除染土の最終処分は国が主導すべきだが、福島以外の都道府県の協力も求められよう。
中間貯蔵施設が立地する大熊町と双葉町の居住人口は、原発事故を引き起こした東日本大震災前の1割にも達していない。施設があるため、避難している住民が帰還に積極的になれない面もあるだろう。まずは再生利用によって除染土を着実に減らしていく必要がある。
復興へ一歩ずつ前進を
福島第1原発を巡っては、23年8月に処理水の海洋放出が始まり、24年11月には事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)の試験的取り出しが初めて行われた。
廃炉への道のりは長いが、復興に向けて一歩ずつ前進していきたい。





