トップオピニオン社説立民選挙総括 敵失頼みでは好機生かせず【社説】

立民選挙総括 敵失頼みでは好機生かせず【社説】

立憲民主党は、参院選結果について敗北を認める総括文書を決定した。

石破茂政権が衆院選、参院選で大敗し、与党が衆参で過半数割れした民意に反して石破氏が首相を続投する現象は、野党第1党の立民もまた「敗北」したことによるところが大きい。

「事実上の敗北」認める

7月の参院選では22議席に留まり、そのうちの1議席は東京選挙区補選枠で任期が3年後に来てしまう渋い結果だった。

立民は臨時常任幹事会で、「事実上の敗北と言わざるを得ない」などとする参院選総括文書を承認し、強い危機感を示した。自民、公明両党が衆参での安定多数を一挙に失い少数与党になっても石破内閣が続いており、政治に変化が起きないのだから当然だろう。

立民にとってさらに深刻なのは、参院選後も各世論調査の政党支持率で参政党や国民民主党よりも低い位置に落ちていることだ。この傾向は参院選比例代表の得票順位を反映している。総括文書では、若者、無党派層、新規投票者の支持を得られなかったと率直に認めるとともに、党の立ち位置を示し得ていないことを敗因に挙げている。

その立ち位置を計りかねる要因となったのは、一つに内閣不信任決議案の提出を見送ったことだ。石破氏が首相のままなら与党は選挙に負けると、敵失を見越した奸計(かんけい)だろうが、有権者には戦う気概のない弱さと映る。また、少数与党の政権と部分連立を模索したともみえる。

一方、立民は選挙になると共産党と協力する野党共闘を続けている。参院選福島選挙区では立民は野党共闘の末に、優勢とみられていた選挙で惜敗した。参院選で共産も敗退したが、「立憲共産党」への拒否感で離れる票もある。

結果、立民は政権にも緩い対応であり、共産とも手を繋(つな)ぐという主体性がなく立ち位置の分からない政党となり、比例代表の得票数で参政や国民の後塵を拝することになった。

物価高対策が争点に浮上し、「給付金2万円」を掲げた与党に対して、野党は概ね減税を公約に掲げたが、立民は消極的だった。「手取り増」を訴える国民民主、消費税の段階的廃止を掲げた参政の勢いを尻目に、立民も軽減税率の時限的引き下げを公約にしたが、争点を巡る論戦でも存在感を薄くした。

野田佳彦代表には首相だった当時、膨れる社会保障費の財源確保のため「社会保障と税の一体改革」と称して消費税増税のために政権を投げ出したという自負もあろう。だが、かつての政権担当経験による発想が、自民党と変わらない「古い政党」と若年層に受け止められることになる。

社会像の提示が最重要

旧民主党が政権獲得への途上で見せた政官財「鉄のトライアングル」批判、天下り批判、「霞が関解体」などのスローガンは、是非はともかく何をするのかという志は掲げていた。

それが今の立民からはうかがえない。今後、抜本的に党の組織・体制を改革する方向だが、党が一丸となって、どのような立ち位置、社会像を示すかが最も重要になろう。

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