トップオピニオン社説マイナ保険証 国民の不安払拭に努めよ【社説】

マイナ保険証 国民の不安払拭に努めよ【社説】

マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」への本格移行に伴い、後期高齢者医療制度と国民健康保険の多くで従来型の健康保険証が7月末に有効期限を迎えた。

マイナ保険証を巡っては、従来型保険証の廃止が急に決まったことで多くの混乱を招いたほか、別人情報とひも付けられるミスが続発したために国民の不信感は強い。政府は国民が安心して健康保険を利用できるように努めるべきだ。

利用率は3割にとどまる

マイナ保険証はマイナカードに健康保険証の機能を持たせたもので、過去に処方された薬が閲覧できたり、高額療養費制度の手続きが簡略化されたりするなどの利点がある。利用すれば投薬、検査の重複防止や適切な医療の提供、さらに医療費の削減にもつながるだろう。

だが別人データの誤登録問題が尾を引き、利用率は今年6月末時点で約30%にとどまっている。政府はミスの再発防止を徹底するとともに、マイナ保険証を導入した目的を改めて国民に丁寧に伝える必要がある。

従来型保険証の廃止は2022年10月、当時の河野太郎デジタル相が表明した。しかし23年5月、厚生労働省はマイナ保険証に別人の情報がひも付けされていたケースを確認したと発表し、セキュリティー面の懸念が強まった。また高齢者が、病院窓口でのカードリーダーの操作や暗証番号の入力などを困難に感じるケースもある。

昨年12月には、従来型保険証の新規発行が停止された。マイナ保険証の使用が困難な人には「資格確認書」が発行される。ただ厚労省は、マイナ保険証への切り替えなどを熟知していない高齢者らが保険診療を受けられず、医療現場が混乱する事態を避けるため、期限切れ保険証での受診も26年3月末まで認めることにした。

高齢者は従来型保険証に似た資格確認書の方が使いやすいだろう。政府はマイナ保険証の利用率向上を急ぐのではなく、資格確認書との併用で国民の不安を払拭する必要がある。資格確認書の発行について、高齢者に分かりやすく説明することも求められる。

混乱を招いた従来型保険証の廃止決定は拙速だったと言わざるを得ない。本来であれば、両者を併用する中でマイナ保険証の信頼性や利便性を高めていかなければならなかったはずだ。

今後は、サラリーマン向けの健康保険組合の保険証が12月1日に期限を迎える。政府はマイナ保険証への移行について改めて周知徹底すべきだ。

政府は地道に信頼回復を

総務省消防庁は、マイナ保険証を活用した救急搬送を10月から全国で始める。救急隊員が現場でマイナ保険証を読み取り、患者のかかりつけ医や服用している薬などを把握して医療機関へ円滑に搬送できるようにするものだ。こうした仕組みも、従来型保険証の廃止を急がなければ、より多くの国民の利用を見込むことができていただろう。

スマートフォンをマイナ保険証として使えるようにするサービスも順次始まる予定だ。政府は信頼回復に地道に取り組む必要がある。

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