
米国とウクライナの首脳会談が行われ、トランプ大統領はゼレンスキー大統領にロシアの軍事侵攻を受けているウクライナの安全の保証に関与する方針を確約した。続く両国と欧州首脳らとの会談で具体化に向けた協議が行われたが、ロシア軍を抑止するとともにロシアとの交渉で和平や停戦の実現に道を開いてほしい。
「包括的和平」目指す米
ロシアのウクライナへの軍事侵攻は、あからさまな主権侵害であり国際法に違反する領土拡張の侵略行為だが、国際社会はロシアを制御できないジレンマに立たされてきた。一方的に国土を占領されたウクライナ、100万人とも推定される死傷者を出しながら軍事侵攻を続けるロシアの双方をテーブルに着けようというトランプ氏の大胆な交渉力は評価したい。
だが、先の米露首脳会談で、プーチン大統領はウクライナ東部2州の放棄を要求し、その見返りにウクライナと欧州を攻撃しないとの書面による約束を申し出たと米紙が報道しており、またトランプ氏も同会談後、自身のSNSにウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟もクリミア半島返還もないと投稿した。同会談の内容は明らかになっていないが、領土交渉に踏み込んだとみられ、欧米世論からは批判も出ている。
米ウおよび欧州首脳らとの会談では、ウクライナへの安全の保証が話し合われたが、ゼレンスキー氏は米国がこれを確約したことが重要だとの認識を示した。欧米諸国に同盟国を持たないウクライナに派兵する国はない。むしろウクライナはソ連崩壊後の独立国家共同体(CIS)創設協定に調印した立場であるが、旧ソ連の国々との集団安全保障条約機構(CSTO)には加盟しなかった。
しかし、CIS、CSTOの形骸化やCIS諸国のロシア離れが進み、ウクライナが欧州連合(EU)、NATOへの加盟を進めたことに対し、「裏切り」とみたプーチン政権はウクライナの領土を奪う軍事行動に出た。この経緯からNATO加盟国がウクライナへの安全の保証を具体化すれば画期的なことだ。
これに即座にロシアは反発している。構想として浮上したNATO加盟国のウクライナへの部隊派遣について、ロシア外務省は声明で「断固反対する」と表明し、「制御不可能な紛争の激化」を警告した。トランプ氏は米軍の地上部隊派遣を否定し、米国の関与のあり方について空軍による協力を検討する構えを見せている。
米露首脳会談でプーチン氏は早期停戦交渉には応じず、トランプ氏は「包括的和平合意を目指す」ことに方針を転換した。国境線を画定しないままの紛争の鎮静化は、朝鮮戦争の休戦による軍事境界線、第2次世界大戦終戦後にソ連軍が侵攻し、国際法上の帰属が決まっていない千島列島、南樺太(サハリン南部)の例がある。
戦禍繰り返さない交渉を
日本は日米安保条約、韓国は米韓相互防衛条約により安全の保証がなされた。
それはウクライナにも必要だ。戦禍がこれ以上繰り返されない交渉を続けるべきだ。






