トップオピニオン社説デブリ回収遅れ 地元住民に十分な説明を【社説】

デブリ回収遅れ 地元住民に十分な説明を【社説】

隔離弁を通過するデブリの回収装置=4月15日午前、福島第1原発(東電提供)

東京電力は福島第1原発について、3号機の溶け落ちた核燃料(デブリ)の本格的な取り出し開始時期が、当初予定の2030年代前半から37年度以降にずれ込むことを明らかにした。廃炉作業に関しては地元住民に丁寧に説明し、十分に意思疎通を図る必要がある。

廃炉作業の「最難関」

デブリは核燃料が溶け落ち、コンクリートなど内部構造物と混ざって固まったもの。人が近づけば数分で死亡するほど放射線量の高いデブリが、1~3号機内には約880㌧あると推定されており、取り出しは廃炉作業の中でも「最難関」とされる。

昨年11月には、11年3月の福島第1原発事故後初めて試験的取り出しに成功し、今年4月には2回目の作業も実施。「テレスコ式」と呼ばれる釣りざお状の回収装置を原子炉格納容器内に投入し、2回合わせて約1㌘を採取した。最初に取り出したデブリは分析の結果、想定よりもろく、人力でも砕けるほどだったという。

本格的な回収は、使用済み核燃料を搬出済みの3号機から始める予定だ。東電はデブリを特殊な装置で削って小さくし、格納容器の下部に落とした上で容器の横から取り出すことを想定している。放射線量が高い部分には充填(じゅうてん)剤で固める手法も組み合わせるとしている。

この工法には、建屋の上部に新たな設備を造ったり、隣接する放射線量の高い建物を解体したりする作業が必要となる。取り出し開始時期を遅らせたのは、こうした準備に12~15年程度必要だと判断したためだ。どのような工法を用いるとしても、放射能漏れを抑え、安全を確保しなければならない。デブリ回収には遠隔操作できるロボットが欠かせないが、極めて高い放射線量にも耐えられる「ダイヤモンド半導体」も活用したい。

一方、東電は51年の廃炉完了目標は維持する方針を示した。地元住民の復興への期待を考慮したとみられる。しかし、この目標は福島第1原発事故から間もない11年12月、原子炉内の状況が判明していない中で、1979年3月に発生した米スリーマイル島原発事故を参考に設定したものだ。

福島の事故はスリーマイル島よりもはるかに深刻であり、デブリを全て回収し、敷地を再利用できるまでに100年以上かかるとの見方も出ている。デブリの取り出し開始時期を遅らせる以上、廃炉完了目標も変更すべきだろう。まずは廃炉工程の中で現時点で実現可能な作業の完了目標を設定し、地元住民の理解を得る必要がある。

取り出したデブリについて、東電は密閉容器に収納した上で福島第1原発の敷地内に整備する保管設備に移送し、その後は国と連携して処理するとしている。こうした計画に関しても地元に不安を抱かせないように十分な説明が求められよう。

処理水放出も着実に

福島第1原発には処理水を貯蔵するタンクが約1000基ある。処理水の海洋放出が始まったことで、タンクの解体も行われている。解体後の空き地はデブリ取り出しにも活用される予定だ。廃炉に向け、処理水放出も着実に進めたい。

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