トップオピニオン社説原爆投下80年 式典の意義広くアピールを【社説】

原爆投下80年 式典の意義広くアピールを【社説】

「原爆の子の像」(中央)とその周りに展示される折り鶴=7月24日、広島市中区

広島はきょう、長崎は今月9日に「原爆の日」を迎える。今年は原爆投下から、また終戦から80年の節目の年でもある。今年に入り硫黄島(東京都小笠原村)、沖縄県と慰霊の旅を続けておられる天皇、皇后両陛下は6月に広島県を訪れ、原爆犠牲者を慰霊され被爆者とも懇談された。9月には長崎県を訪問される予定という。

出席国が過去最多に

緊迫する国際情勢に加え、一昨年の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)開催、さらに被爆者の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」が昨年ノーベル平和賞を受賞したこともあり、「ヒロシマ・ナガサキ」や「ゲンバク」に対する世界の関心が高まっている。海外から広島市の原爆資料館を訪れた人も増え、昨年度の入館者数は約200万人と過去最多を記録した。

そうした中、長崎市は昨年、平和祈念式典に紛争当事国のイスラエルを招待せず、これに米英などが反発して大使らが欠席し議論を呼んだ。一方、広島市はイスラエルは招待したがロシアとベラルーシを招かず、「ダブルスタンダード(二重基準)」と批判された。

そのため今年、長崎市は日本に在外公館を置く全ての国・地域に招待状を送り、イスラエルも式典に招く方針を決めた。広島市は各国代表を「招待」するのではなく、日本が国家承認していないパレスチナと台湾を含むほぼ全ての国・地域に開催を「通知」する形に変更した。出席する国・地域は過去最多になる見込みで、台湾からも参加の返答があったという。

平和を祈念する式典が時の国際情勢や各国の思惑に翻弄(ほんろう)されてはならないが、主催者側も曖昧な基準を設けず、なるべく多くの国や地域の参加を促し、式典の意義を広く世界にアピールしていくことが重要だ。

一方、国内では被爆者の高齢化が進み、被爆の象徴的存在である原爆ドームの経年劣化が目立つなど、さまざまな課題を抱えているが、日本は世界で唯一の被爆国だ。広島、長崎の両市は、原爆投下による惨状や平和の尊さ、そして「核兵器のない世界実現」への想いを世界に発信し続けていく責務がある。被爆体験を風化させないための工夫や努力も求められよう。

それと同時に、国家の独立や民族の生存を図るには、軍事力、中でも核兵器が戦争を防ぐ力を持っていることも正しく認識する必要がある。安全保障政策を考える上で「核抑止力」の重要性を忘れてはならない。

戦後80年の間、世界各地で紛争が絶えることはなかった。現在もロシアのウクライナ侵略や中東地域の紛争拡大、中国の覇権主義的な行動などで国際社会の緊張は高まるばかりだ。今年の防衛白書が指摘するように「国際社会は戦後最大の試練の時を迎え」ており、第3次世界大戦の勃発さえ危惧されている。

「核の傘」の信頼性向上を

そうした厳しい国際環境の中、日本は「自分の国は自分で守る」気概を持つとともに、日米の同盟関係を一層緊密深化させ、日本に対する米国の「核の傘」を含む拡大抑止の信頼性を向上させるべきだ。

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