トップオピニオン社説海自不正 人員充実を防止につなげよ【社説】

海自不正 人員充実を防止につなげよ【社説】

海上自衛隊の潜水艦修理を巡って、川崎重工業が架空取引などで捻出した裏金で海自隊員に物品提供や接待をしていた問題で、防衛省は特別防衛監察の最終報告を取りまとめた。

自衛隊に対する国民の信頼を大きく損なう事案だ。再発防止の徹底を求めたい。

川重が隊員に私物購入

川重は海自との架空取引でプールした裏金を原資に、艦内で使う工具や備品などを不正に納入したほか、隊員13人にゲーム機やゴルフ用品、腕時計といった私物を購入。総額は約140万円相当に上り、1人で約50万円相当を受領した隊員もいた。コンプライアンス(法令順守)意識が欠落していると言わざるを得ない。

防衛省は、私物を受け取った13人について、倫理規定に抵触する可能性があるとし、別途処分を検討する。このうちの1人は調査に「先輩から私物を要望できることを教えてもらった」と回答。利益供与は長年にわたり常態化していたとみられる。川重との架空取引は遅くとも1985年ごろ始まり、2018~23年度の6年間で計約17億円の架空取引が確認された。

川重のほか、三菱重工業など3社でも不正な物品提供があった。防衛省は監督責任を問い、海自トップの斎藤聡海上幕僚長を減給10分の1(1カ月)の懲戒、隊員92人を訓戒や注意とする処分も公表した。海自では潜水士による手当の不正受給なども発覚しており、抜本的な改革が求められよう。

ただ今回の問題の背景には、海自内で備品が現場に行き渡らない現状がある。最終報告は、海自の補給体制の不備が企業側に物品を要望する風潮を生んだとして「組織としての構造的な問題」と指摘。補給担当者が不足し、現場のニーズをくみ取る仕組みが不十分だったことが不正の原因としている。

不正防止には、順法意識の向上と共に人員や物品の充実も不可欠だ。石破茂首相は自衛官の処遇改善を重視し、今年5月には手当の新設、増額を柱とする改正防衛省設置法が成立した。

ただ民間企業との人材獲得競争は激化しており、自衛官の採用率向上につながるかは不透明だ。米軍では映画館やレストランの料金が優遇され、退官後は民間軍事会社などに再就職し、医療費が免除される。人手不足の解消には、一層の処遇改善のほか、国防に従事する自衛官の重要性について国民の理解を深める必要もある。

防衛費は13年連続増額され、反撃能力(敵基地攻撃能力)を柱にした防衛力整備計画には過去最大の43兆円が投じられる。27年度に防衛費を国内総生産(GDP)比で2%とする目標も掲げている。ただ、その4割は人件費だ。安全保障環境が厳しさを増す中、2%では不十分だとの指摘も出ている。トランプ米政権が日本に対し、防衛費をGDP比3・5%に引き上げるよう要求したとの報道もある。

国民の信頼を失うな

防衛力強化が欠かせない中、自衛官は国民の信頼を失わないように気を引き締める必要がある。政府は不正根絶に向けた組織改革と共に自衛隊の人員や装備の充実に尽力すべきだ。

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