
政府は、東京電力福島第1原発事故で放射性物質に汚染された土地の除染で生じた「除去土壌」を首相官邸に搬入し、前庭の植栽の下地として活用する工事を行った。
安全性をアピールして同様の事例を全国に広める狙いだ。国民の理解醸成につなげたい。
首相官邸で工事行う
除染土は2045年3月までに福島県外で最終処分することが法律で決められているが、受け入れ先は決まっていない。首相官邸の工事は除染土の活用によって最終処分する量を減らす計画の一環で、福島県大熊町、双葉町の中間貯蔵施設から約2立方㍍の除染土を搬入。幅2㍍、奥行き2㍍の範囲に60㌢㍍を盛り、通常の土をかぶせた上で植栽した。環境省は1週間に1回程度、放射線量を測定し、ホームページなどで情報発信するとしている。
中間貯蔵施設は東京都渋谷区に匹敵する約1600㌶の広さがあり、約1400万立方㍍の土壌が保管されている。土壌の4分の3は、放射能濃度が1㌔㌘当たり8000ベクレル以下だ。近くで作業しても被曝線量が年間1㍉シーベルトを超えない水準で人体に影響はない。このため、公共事業などに活用する計画が立てられている。
ところが、環境省が新宿御苑(東京都新宿区)などで計画した活用事業は周辺住民の反対によって頓挫した。この時に発足した市民団体は「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」という名称だ。科学的根拠もなしに除染土を「汚染土」と呼んで不安をあおる反対運動は、風評被害を広げ、福島県民を苦しめるものだと言わざるを得ない。
除染土の安全性は、国際原子力機関(IAEA)によって評価されている。以前から除染土を用いた鉢植えが首相官邸などに設置されているが、特に問題は生じていない。今回の活用現場を視察した林芳正官房長官は「今後は各省庁における再生利用についても検討を加速化する」と述べた。政府は率先して除染土を活用し、国民の間に広がる不安を払拭すべきだ。最終処分の受け入れ先についても早期に決定できるよう努めなければならない。
福島第1原発の処理水海洋放出を理由に23年8月から日本産水産物の全面禁輸措置を取っていた中国は今年6月、輸入を容認すると発表した。ただ、全面禁輸以前から輸入を禁止していた東京や福島など10都県に対しては禁輸を続けるという。日本政府は10都県の禁輸も撤廃するよう強く求めるべきだ。
中国も処理水を「核汚染水」などと批判してきたが、IAEAは海洋放出について「国際的な安全基準に合致している」との見解を示している。福島第1原発の廃炉を進めるには、敷地内に1000基以上ある処理水の保管タンクを減らす必要があり、そのためには海洋放出が避けられない。
風評なくし復興進めよ
中国の批判は「情報戦」の一環だ。日本政府は処理水放出に関する「戦略的対外発信」を強化するとしている。風評被害の根絶や福島の復興に生かさなければならない。





