
今年上半期(1~6月)の訪日外国人数が2151万8100人と、過去最も早いペースで年間2000万人を超えた。消費額も過去最高の4兆8053億円となった。地方への誘客、体験型の「コト消費」を拡大させ観光立国へ弾みをつけたい。
年間消費額も更新視野に
訪日客数が前年上半期に比べ21・0%増加した背景には、日本観光の魅力に加え、コロナ禍からの回復、円安がある。春節(旧正月)や桜の開花時期に中国などからの観光客が増えたことも影響した。
国・地域別では韓国が7・7%増の478万3500人で最多。2位中国が5割増の471万8300人。台湾328万4700人と続く。一方、日本で大災害が起こるとのうわさがSNSなどで拡散された香港は33・4%減の16万6800人にとどまった。風評被害への対策が課題だ。
さらに4~6月の消費額は、中国の5160億円が最高で、次いで米国3566億円、台湾2915億円となっている。過去最多だった24年の年間8兆1257億円を超えることが視野に入ってきた。
しかし、旅行先も消費もまだ大都市が中心だ。政府は「30年に訪日客数6000万人、消費額15兆円」を目標に掲げているが、宿泊施設など大都市圏での受け入れ拡大には限度がある。目標達成には、地方への誘客、体験型のコト消費が鍵になる。
訪日客にはリピーターも多い。東京―京都・大阪の「ゴールデンルート」以外の地方を旅したいという人は多いし、日本の地方は豊かで多彩な観光資源に恵まれている。インバウンド需要は、地方経済活性化の最大のチャンスだ。岐阜県の高山市などインバウンドの拡大で活況を呈している。
ゴールデンルートに代わる新たなルートの開拓と発信をさらに強力に進めたい。北陸新幹線延伸で東京―金沢―京都・大阪などを結ぶ「レインボールート」、瀬戸内海の美しい景観や島々を巡る「せとうちシーニックビュールート」などが注目を集めつつある。海外の観光客はSNSで情報を収集する傾向が強い。官民が連携して発信することが求められる。
地方への誘客は、経済の活性化だけでなく、鉄道のローカル線を観光路線として活用し赤字解消へと繋(つな)がる可能性も秘めている。観光資源を再発見し、受け入れ態勢を整えていきたい。
訪日客の消費額では米国やオーストラリアが伸びている。1人当たりでは全体の平均23万9000円のところ、英国が44万4000円で最も高く、イタリア39万8000円、ドイツ39万6000円と続いている。これら長期滞在者が多い欧米諸国を念頭に、地方文化の体験など質の高いサービスにも力を入れる必要がある。
地方のルール発信を
一方、訪日客に慣れていない地方では、オーバーツーリズムの弊害も生まれやすい。都市部と異なり、人々の生活圏と観光スポットが近くなることも予想される。海外へ観光情報を発信する時点で、それぞれの地方のルールを示しておくのも一つの方法だ。





