日本と米国、オーストラリア、インド4カ国の協力枠組み「クアッド」の外相は、ワシントンで会合を開き、中国のレアアース(希土類)輸出規制などを念頭に、重要鉱物資源のサプライチェーン(供給網)構築に向け、協力を進めることで一致した。中国への輸入依存度低下につなげてほしい。
重要鉱物再利用を支援
共同声明では、中国が4月にレアアース輸出規制を強化したことを念頭に、供給網の「突然の締め付けと将来の信頼性を深刻に懸念している」と表明。資源供給の一国への依存は「国家安全保障を損なう」と警鐘を鳴らした。
レアアースは電気自動車(EV)やスマートフォンなどに使われる高性能磁石の生産や、最先端兵器の開発などに欠かせない。中国の輸出規制は、米国の相互関税への対抗措置として行われた。中国は世界生産の約7割を占め、外交カードの一つとして利用している。
供給網構築の具体策としては、第三国の「都市鉱山」を活用する案が出ている。東南アジア各国に対し、廃棄されたパソコンやスマホなどの電子機器から重要鉱物を取り出して再利用する技術の支援を行って調達の安定化を図るものだ。
レアアースは、日本最東端の南鳥島(東京都小笠原村)沖に広がる排他的経済水域(EEZ)の水深6000㍍の海底でも確認されている。埋蔵量は国内消費量の数百年分とされ、海洋研究開発機構(JAMSTEC)は2026年1月に試験掘削を始める。レアアースを含む泥の回収に成功すれば世界初だ。海洋資源の開発を実現したい。
懸念されるのは、最近の中国海軍の動きだ。今年6月には、空母「遼寧」が中国の防衛ラインとされる「第2列島線」(小笠原諸島―グアムなど)を初めて越え、南鳥島沖のEEZ内を航行。また空母「山東」は、日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)沖のEEZ内で活動した。両空母の艦載機による発着艦が500回以上行われたほか、警戒監視していた海上自衛隊機に山東の艦載機が異常接近するなど危険な挑発に出た。
こうした動きは、台湾有事を想定した演習の実施が第1の目的だったとみていいが、日本近海の海底資源を意識したものだったと捉えることもできる。中国は南鳥島沖の日本のEEZ外側の公海で、レアメタル(希少金属)を含有する「マンガン団塊」を海底から試験採鉱する計画を進めている。
さらに中国は、沖ノ鳥島を「岩」であると主張し、日本のEEZ設定に異議を唱えている。沖ノ鳥島周辺の海底にもマンガン団塊などが豊富に存在すると考えられており、「岩」であれば中国も関与できる。中国空母がEEZ内を航行したのは、こうした資源を念頭に置いた面もあろう。日本は資源開発を急ぐとともに、沖ノ鳥島の管理を強化すべきだ。
地域安定と繁栄に貢献を
クアッドは、故安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、重要な役割を担っている。連携を深め、地域の安定と繁栄に大きく貢献する必要がある。