第27回参議院選挙がきょう、公示される。石破茂首相にとって2度目の大型国政選挙だが、政権中間評価の信任投票というよりも、昨年秋の衆院選で自民・公明連立与党の過半数割れを招いているだけに、進退を懸けた正念場となろう。各党各候補者は7月20日の投開票日に向けて有意義な舌戦を展開し、有権者の審判を仰いでほしい。
自公過半数の成否が焦点
前哨戦の意味合いを持って注目された東京都議選では、自民が過去最低議席にまで落ち込み、公明も敗退した。昨年の衆院選で民意が、石破政権を発足させた与党にノーを突き付けたのは明白だったが、石破氏が首相として続投したことで政権の求心力は弱いままだ。
自公から票が離れ、野党側には大きなチャンスが回ってきている。しかし、競合する野党が多く、共倒れも予想される。立憲民主、国民民主、日本維新の会、共産、れいわ新選組、参政、日本保守など理念・政策の隔たる野党各党で一致している目標は「与党過半数割れ」だ。批判票および無党派票の争奪戦を展開しながらも自公を少数に追い込めるかが焦点になる。
各党は公約に米価に象徴される物価高騰への対策を筆頭に挙げている。与党の自公は1人2万円、未成年者と住民税非課税世帯の大人に1人4万円の給付金支給、ガソリン暫定税率廃止、物価上昇等に合わせた所得税の基礎控除額等の引き上げ――などを打ち出した。
これに対し野党各党はそれぞれ消費税の減税や廃止を掲げており、給付か減税かを巡って熱い論戦が交わされそうだ。また、米価高騰で農政が注目されており食料安保の視点も欠かすことはできない。コメの生産と流通を見直す議論の中で、衰退する国内農業を再生させる各党の政策も注目点だ。
一方、多様性を巡る問題では自民が選挙を経ないまま政策を変えたことに対する保守層の反発も無視できない。岸田文雄前政権が党内の反対を押し切ってLGBT理解増進法制定へ舵(かじ)を切り、日本保守が旗揚げする契機になった、日本保守は同法改正を公約。また、選択的夫婦別姓制度について参政と日本保守は反対している。
外交・安全保障では、自民が防衛力の抜本強化を唱えるのに対し、公明は対話と平和外交の強化を主張することから、政府・与党として同盟国に国内総生産(GDP)比5%の防衛費を迫るトランプ米政権と向き合えるのかは疑問だ。
石破氏は「金額ありきではない」と記者会見で述べたが、防衛費に限らず数字を示さなければ“取引”は成立しないだろう。日米関税交渉の進展もなく、トランプ大統領は「日本は甘やかされてきた」と公示日直前に言い放った。「強い経済」を唱える石破政権だが、米国からも逆風が吹いている。
選挙守る万全の警備を
前回の参院選では応援演説中の安倍晋三元首相が暗殺される悲劇が起きた。政治家を狙った野蛮なテロリズムであり、言語道断である。民主主義の根本は選挙である。選挙が守られるよう万全を尽くした警備がなされるべきだ。