トップオピニオン社説H2Aロケット 宇宙開発支え24年ありがとう【社説】

H2Aロケット 宇宙開発支え24年ありがとう【社説】

温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW」を搭載し、打ち上げられるH2Aロケット 50 号機= 29 日未明、鹿児島県・種子島宇宙センター

24年間、基幹ロケットとして日本の宇宙開発を支えたH2A。本当にありがとう、そして、お疲れ様――。

温室効果ガス・水循環観測衛星「いぶきGW」を搭載したH2A50号機が打ち上げられ、衛星を予定の軌道に投入し、打ち上げは成功した。今号でラストとなる打ち上げでも見事に成功させ、有終の美を飾った。これまでの成果を心から称えたい。

打ち上げた衛星が活躍

H2Aは、旧宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構=JAXA)が開発。液体の水素と酸素を燃料に用いる2段式ロケットで、2001年8月に初号機の打ち上げに成功して以来、24年間にわたって政府などの衛星打ち上げを担った。

打ち上げ後、記者会見した三菱重工業の五十嵐巌・宇宙事業部長は「今までの信頼をH3に引き継いで打ち上げを進めていきたい」と今後の抱負を述べた。また、打ち上げ執行責任者の鈴木啓司さんは最終号打ち上げ責任者という大役に「これまで以上に緊張した」と言い、「(打ち上げ成功に)本当にほっとした」と安堵(あんど)の表情を見せた。まずは三菱重工、JAXAをはじめ関係者の努力を多としたい。

H2Aは50機中、失敗は6号機の1度だけ。成功率は世界トップクラスの98%だ。07年の13号機からは三菱重工に製造と打ち上げを移管、世界の衛星打ち上げ市場への参入も果たした。

H2Aで打ち上げた主な衛星としては、国の安全保障に関わる「情報収集衛星」をはじめ、気象衛星「ひまわり6号」(05年2月)、月周回衛星「かぐや」(07年9月)、金星探査機「あかつき」(10年5月)、小惑星探査機「はやぶさ2」(14年12月)、測位衛星「みちびき2号」(17年6月)など。科学探査や実用衛星として目覚ましく活躍したものが少なくない。

13号機で打ち上げた「かぐや」は裏側まで月の表面の詳細なデータを収集し、23年9月に47号機で打ち上げた月着陸機「SLIM」による史上初のピンポイント着陸成功を導いた。

「はやぶさ2」は26号機で打ち上げられ、小惑星「リュウグウ」への着陸(19年2月と7月)やサンプルリターンを果たした(20年12月)ことは記憶に新しい。

高い成功率を誇るH2Aだが、課題は1機約100億円と言われる費用だった。米スペースX社などの登場もあり、衛星打ち上げ市場の価格競争が激化する中、目指した海外衛星の商業打ち上げは苦戦。カナダの通信放送衛星「テルスター12」や英国の通信衛星「インマルサット6」など5基にとどまった。

民生部品の大幅な活用などで低コスト化を実現するロケットで、H2Aの後を継ぐH3。初号機こそ、H2Aで実績のある2段ロケットで電気系統の異常から打ち上げに失敗したが、2号機以降は1年間で4回連続で成功させている。

H3で夢を実現したい

鈴木さんは1996年のH2A開発開始時から関わり、経験や知見を重ねてきた。重要なのは技術の蓄積と伝承である。H3関係者にはこれまで培った経験を基に、H2Aで果たせなかった夢を実現してほしい。

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