トップオピニオン社説日韓国交60年 約束に基づく未来志向を【社説】

日韓国交60年 約束に基づく未来志向を【社説】

日本と韓国が国交を回復して6月22日で60年が経過する。1965年の基本条約・請求権協定によって10年の日韓併合条約は「もはや無効」となり、国家同士の外交関係が開かれた。

韓国で新大統領が誕生

60年は人で言えば還暦だ。干支(えと)が一巡し最初に戻ることを意味する。両国関係もこの間紆余(うよ)曲折を経たものの、自由民主主義、資本主義経済の共通価値の下、交渉で課題を解決し、最も濃厚な隣国関係を築いてきた。

韓国では6月に大統領選挙が行われ、李在明大統領が誕生した。選挙から14日後には、早速、カナダで石破茂首相との対面会談が実現した。この席で李氏は「過去の問題はしっかりと管理し、未来志向の関係を築いていく」と述べたと韓国メディアは伝えている。韓国大統領は就任当初、対日関係で「未来志向」を口にするが、支持率が落ちてくると政権浮揚のために「反日政策」に転換する例が少なくなかった。未来志向が最後まで続くことを期待する。

だが、李氏の「過去の問題はしっかりと管理」するとの発言には留意する必要がある。既に基本条約・請求権協定で解決されている事柄を蒸し返していく考えなのか、これ以上問題化させない考えを示したものなのか判然としないからだ。

現在、韓国で対日課題は「コップの半分の水」だ。これは「元徴用工」訴訟で韓国大法院(最高裁に相当)が日本企業に対して賠償命令を下し、日本側がこれに応じず、韓国政府がつくった財団が日本企業に代わって賠償金の支払いを行っていることを指す。尹錫悦前政権は日本企業の同財団への資金拠出を期待した。韓国政府がコップ半分の水を用意したのだから、もう半分を日本企業・民間が満たしてほしいとの要望である。

これに対して日本側は一切反応していない。判決は日本側に「賠償」を求めるもので、これは日本統治が「不法」だったとの前提に立つ。つまり併合条約そのものが不法だったとの解釈であり、基本条約・協定を否定する、ひいてはその後の60年間の日韓関係の根拠をひっくり返すことになりかねないからだ。

朴槿恵政権・文在寅政権の時期は日韓関係の「失われた10年」と言われている。ノージャパンが展開され「最悪の関係」に陥った。その後に登場した尹政権では対日関係改善に努めたが、文政権で生じた諸問題はほとんど解決されていない。ホワイト国解消の原因となった戦略物資の不明、自衛隊機への管制レーダー照射等々は曖昧なままだ。

先人の知恵を無にするな

ただし、曖昧にしておくことは外交の知恵でもある。基本条約の「併合条約はもはや無効である」との文言は、日本と韓国では解釈が違う。それぞれ国内を納得させるために、都合のいい読み方を行った。これがなければ両国の国交は開かれず、日本の資金・技術の提供もなく、韓国のその後の発展はかなり遅れただろう。先人の知恵を無にしてはならない。

国家間の約束を基準とし、その原則の上で国際社会の現実に対応した未来志向の関係を築いていく新たな60年が始まることを期待する。

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