トップオピニオン社説【社説】G7サミット 影響力低下で問われる在り方

【社説】G7サミット 影響力低下で問われる在り方

カナダ・アルバータ州カナナスキスで開催されたG7サミットでファミリーフォトをとる各国首脳ら=2025年6月16日(UPI)

先進7カ国首脳会議(G7サミット)がカナダ西部カナナスキスで開かれた。トランプ米政権の高関税政策で不透明感を増している世界経済やロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援、さらにイスラエルとイランの軍事衝突など緊迫化する中東情勢に対し、G7の結束を保って事態打開に向けた声明を出せるかどうかが焦点であった。しかし会議初日、トランプ大統領が中東情勢への対応のため帰国し、会議から離脱するという異例の展開となった。

トランプ氏が途中で離脱

やはりカナダでの開催となった2018年のシャルルボワ・サミットでは、米一国主義を強調するトランプ氏と他の首脳が激しく対立、閉幕を待たずに会場を後にしたトランプ氏が発出された首脳宣言を承認しないと表明し、G7の機能不全を露呈させた。

そのため議長国カナダのカーニー首相は同様の混乱を避けるため、今回はG7の結束を示すことを最優先とし、首脳宣言の発出は見送って分野ごとの成果文書を発表するに留(とど)め、さらに全体討議では米国の関税問題などで深入りを避ける方針を事前に示していた。

だが、全体会議の終了を待たずトランプ氏が離脱したことで、多くは米国抜きの討議に終わった。18年のサミットは「G7ではなく、G6プラス1だ」などと批判されたが、それに倣えば今回のサミットもトランプ氏に翻弄(ほんろう)され亀裂が表面化し、「G7ではなく、G6のサミットに終わった」と言えよう。

そうした中、初日の全体会議では中東情勢に関する首脳声明が発表され、イスラエルの自衛権と安全保障を支持する一方、イランの核兵器保有を決して容認しない姿勢を明確にした。

また世界経済の見通しについて意見が交わされ、石破茂首相は世界貿易機関(WTO)を核とする「多角的な自由貿易体制の維持・強化」の重要性を強調した。重要鉱物のサプライチェーン(供給網)の強化策や、人工知能(AI)の活用、山火事対策なども議題となった。さらに世界の安全問題が議論され、石破首相はインド太平洋への関与を訴えた。

2日目の全体会議ではウクライナ情勢が議論され、ゼレンスキー大統領も加わったが、トランプ氏不在のため対露追加制裁など具体的進展はなく、共同声明も見送られた。石破首相はロシアの侵攻がインド太平洋にも影響を及ぼしているとし、露朝の軍事協力に懸念を示した。

半世紀の間に状況が変化

今年は1975年にフランスで開かれた第1回サミットから50年の節目に当たる。半世紀の間に状況は変化し、世界の国内総生産(GDP)に占めるG7の割合は6割から4割に減少。一方で中国やインドが参加する20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が存在感を増すなど、G7サミットの影響力が低下している。今回招待されたインドネシアの首脳がロシアとの首脳会合を優先し、直前にサミット欠席を決める一幕もあった。

世界の分裂と対立が深刻化する中、これまでのG7のままで良いのかどうか、その在り方が問われるサミットとなった。

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