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【社説】日本学術会議 実績を示す特殊法人の運営を

日本学術会議を内閣府の特別機関から特殊法人に改編する新たな日本学術会議法が国会で成立した。これにより、政府機関として1949年に発足した日本学術会議は来年10月から特殊法人になる。「わが国の科学者の内外に対する代表機関」として公正中立な法人運営を心掛けて実績を示すべきだ。

左翼系団体が反対運動

新法に対して、国会周辺はじめ各地で反対運動が繰り広げられた。「学問の自由を守れ」「日本学術会議つぶしをやめろ」などのスローガンを書いたプラカードや横断幕を掲げ、シュプレヒコールを上げる市民団体は左翼系で、50~60年前には大学内で反戦平和を唱えた若者たちだったのであろう。

学術会議は連合国軍総司令部(GHQ)による占領期に、科学者が戦争に協力した敗戦国において軍事と学問を切り離す方針が採られ、“反戦平和”を金科玉条とした。共産主義運動が大学界を席巻した戦後の高度成長期にあって、産学協同の議論に対し「反独占資本主義」のイデオロギー的な主張に引きずられ、また軍事に結び付く研究は「軍学共同」として批判するなど学術界における反戦イデオロギーの“聖域”と化していった側面もある。

もともと学術会議法人化の発端は、2020年に当時の菅義偉首相が会員候補者6人の任命を拒否したことだった。これをいち早く1面トップで詳報して批判したのは共産党の機関紙「しんぶん赤旗」(同年10月1日付)だった。

同紙は「前例ない推薦者外し」であり、首相の「人事介入」だと批判。さらに当時の委員長が記者会見を開いて反対したのは、共産党が学術会議と深い関係を築いた証左だ。これに朝日新聞などのマスコミも続き、任命拒否の撤回運動が展開された。

一方、このため国の特別機関でありながら政治的偏向が浮き彫りになり、学術会議の在り方が問われる議論ともなった。その結果、特殊法人という形での存続が適当とされ、今回の新法制定に至った。

首相の任命拒否は合法だった。新法成立前の日本学術会議法は第1条に「内閣総理大臣の所轄」と定め、第7条に「会員は、第十七条の規定(同会議の会員候補選考、推薦)による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」とあった。特殊法人化する新法では、会員からなる選定委員会が選んだ候補者を総会で選任する。

注目される活動や財務

議論の過程では学術会議の実績を問う指摘もあった。国内外で科学者を代表する機関として選(え)りすぐりの頭脳を集めたはずなのに、その名声がとどろくことはない。例えば先日、最大級256量子ビット超伝導量子コンピューターを開発した民間企業の富士通、国立研究開発法人の理化学研究所のような世界に誇る実績は出てこない。

特殊法人化に伴い、学術会議は事業計画や予算に対する監査を受けることになるが、評価委員会や監事を首相が任命することに反対している。だが、活動や財務の監査は、国会や世論も注目する。まずは業績を評価される法人になってほしい。

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