トップオピニオン社説骨太の方針 「賃上げ」要の成長どう実現【社説】

骨太の方針 「賃上げ」要の成長どう実現【社説】

政府は「減税政策よりも賃上げ政策こそが成長戦略の要」とする「骨太の方針」を決定した。

ここ数年、高い賃上げが続くものの、長引く物価高のため、成長型経済はいまだに実現できないでいる。トランプ米政権の関税政策という新たな課題もある。目標実現に向けた固い決意と実効性のある政策が問われている。

減税求める野党を牽制

今回の骨太方針は、石破茂政権で初の策定である。夏の参院選を控えて、野党が求める消費税減税などを多分に意識し、それを牽制(けんせい)するものとなっているが、成長重視の方向性は間違っておらず、賃上げ重視も妥当である。

消費税減税も物価高対策と消費刺激を兼ねたような政策で一理あるが、時限的とは言え、消費税法の規定から社会保障の財源を削るという問題があり、適切ではないだろう。

当面の物価高対策としては、石破首相が骨太方針決定と同じ日の夜に表明した国民1人当たり2万~4万円の給付の方が速さの面からも適当であろう。首相は2024年度税収の上振れなどから財源を確保する方針で、これは「財政を悪化させない」(首相)ためである。25年度補正予算編成での対策を見据えて、骨太方針では「機動的な政策対応を行っていく」としている。

税収の上振れは本来、国債発行の圧縮に充てるのが筋だ。しかし、物価高の長期化にあえぐ家計の支援に回すのは現状やむを得まい。

国と地方を合わせた基礎的財政収支(PB)を黒字化する時期を25~26年度と幅を持たせた結果、財政健全化目標が後退する形になったのも、このためであろう。

小泉進次郎農林水産相が随意契約での備蓄米放出で懸命に米価の安定に奔走しているのも、当面の物価対策と言える。1年で2倍以上となり、物価高の象徴的存在になっているコメの価格は、同農水相の働きもあり、3週連続で下がってきた。首相が公言した3000円台にはまだだが、良い傾向であり、今後も続くことを期待したい。

問題はトランプ関税の影響と賃上げ政策の中身である。1~3月期がマイナス成長だったことから、今後、米関税の影響の度合いによっては景気後退の懸念も拭えず、骨太方針が「経済運営に万全を期す」としたのは当然である。

もう一つの、肝心の成長戦略については「賃上げこそが要」と位置付け、29年度までの5年間で実質賃金の年1%程度の上昇を定着させる目標を掲げた。現状を想定すれば、5%以上の賃上げの定着が不可欠である。この目標をどういう政策で達成するかである。

米関税の影響に対策を

賃上げ率はここ数年、高い伸びが続き、25年春闘でも5・32%、中堅・中小企業では4・93%(連合発表)となっているが、実質賃金は一時プラスに浮上したものの、最近は4カ月連続のマイナスになっている。

26年春闘ではトランプ関税の影響から企業の業績悪化が見込まれ、賃上げ率は低下する可能性が高い。これを補う物価高対策も重要である。

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